アラ還でも、恋をしていいですか?
変わる日常


さんさんと降りそそぐ日光。
深く青い海は白波を立て、海鳥が空を舞い、肌に纏わりつく潮風。

急斜面に張り付くように家が建ち並び、防風林の向こうに棚田がある。私の故郷の島は狭い土地に工夫を凝らして暮らしてた。

「あはは!幸ちゃん、ほんと掴むの下手くそだねえ!」
「むう……」

浅瀬で魚取りをしている最中、幼なじみたちに笑われるのも仕方ない。私が腰から下げてる魚籠(びく)には、小魚一つ入ってないのだから。
おまけに、足を滑らせて海に思いっきり倒れてしまう。

「やめた!つまんない!!」
「あ、幸ちゃん!おばちゃんに怒られるよ」
「いい!どうせ、あたしには期待なんてしてないもん」

昔から私は愚鈍で、やることなすことすべて人並みにすらできない。すぐにいじけたり拗ねたりして、逃げる癖がついてしまってた。

「夕飯のおかずにするんでしょ?」
「あたし、食べないから!」
「少し、分けようか?」
「いらない!」

親切に魚を分けると言われてもなんだか屈辱的で、プイッとそっぽを向いてさっさと海から上がる。
そして岩場をずんずん上がり、濡れた服のまま道に出る。当時はアスファルトやコンクリートなどほとんどないから、砂利を敷いただけの砂利道を進んでいくと、防風林のそばにある灌木の間から素っ頓狂な声が上がった。

「幸ちゃん!ずぶぬれじゃないか。海にでも落ちたのかい?」
< 21 / 60 >

この作品をシェア

pagetop