彼の指定席
「……弘樹」
「へぇー。じゃあ、ヒロくんだ!!」
うわっ……、沙織ってば。
勝手に呼び名を決めちゃってるし。
初対面なのに、沙織は「ヒロくん、ヒロくん」と彼を呼んだけれど……。
あたし、ドキドキしすぎて……
「増永さん」と呼ぶだけで精一杯。
それからも沙織は、積極的にいろんなことを聞き出してくれた。
年齢は、あたしたちよりも二つ上の二十五歳。
大学を卒業してすぐに、このゲーセンの関連会社に就職。
入社二年目で、店長になったらしい。