イノセント*ハレーション
ペタンペタン...と小気味良い調子で歩き、辿り着いたのは、もちろんトイレ。

昨年の9月中旬にプールが使用不可になってから1度も掃除されていないトイレはいかがなものなのだろう。

不気味なくらい興味津々なあたしは、思ったよりも意気揚々とその扉を開けた。


「あれ?凪夏ちゃん?」


その先にはまさかの先客がいた。

真面目だから皆がやらなさそうなところを率先してやっていてくれたんだろうと悟る。

意気揚々なんていう自分の謎の心持ちなんか蔑ろにして、あたしは彼女に頭を下げた。


「鶴乃さんごめん。1人でこんな汚いところやらせちゃって」

「ううん、いいの。私トイレ掃除けっこう好きなんだ。個室に籠って黙々と出来るから。それに、このハイターの匂いも好みなんだよね。トイレほど綺麗にしてあげたって思える箇所ないよ。それもわりと魅力なんだよ」


なんて、トイレ掃除の良さを熱弁されちゃったら、あたしの一時の感情なんて泡のようなものに感じる。

あたしより鶴乃さんの方がトイレ掃除愛好家らしい。

あたしがぼんやりと物思いに耽っている間もせっせと手を動かす。


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