エリート警察官の溺愛は甘く切ない
そしてお見合いの日。

私は母さんの着物を着て、小料理屋に向かった。

「ねえ、お相手の人はどんな人なの?」

父さんに聞いたが、本人は首を傾げる。

「父さんも会った事がないんだ。ただ父親である上司も来るから、失礼のないようにな。」

「はーい。」

タクシーの窓から、外を見る。

どんより雲が周囲を覆っている。

まるで私の気持ちを、表しているみたい。


「着きましたよ。」

母さんに言われ、渋々タクシーを降りる。

「はい、笑顔。」

そう言われ、作り笑いを浮かべる。

「あんたはそうやっていると可愛いんだから、笑ってなさい。」

「面白くもないのに、笑える訳ないでしょ。」

軽く息を吐いて、私達一家は小料理屋の奥の部屋に通された。


「お相手の方は、もう到着されていますよ。」

「何⁉上司を待たせるなんて、俺としたことが!」

父さんは急いで、部屋の中に入って行った。
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