愛が痺れた

 それからレシピ本を買って、朝晩あれこれ作り始めた。昼は残り物をお弁当箱に詰めて持って行ったり、同僚たちと外に食べに行ったり。
 そうしていたら、肌荒れが治った。どの化粧水を使っても治らなかったから、こういう肌質なのかもしれない、と諦めていたけれど、そもそも食生活が良くなかったらしい。

 わたしが楽しく料理をしていると知った健太さんは、わたしの料理を食べたがった。
 目も舌も肥えたプロに、料理を始めたばかりの素人の料理を食べさせたくはなかったけれど、健太さんが「美味い!」と満面の笑みで言ってくれるから。嬉しくなって、ますます料理に夢中になった。

 食後のコーヒーも、粉末をお湯で溶かすものから、コーヒー粉をドリッパーとフィルターを使って抽出するものに変えた。コーヒーなんて、インスタントだろうが缶コーヒーだろうが大差ないと思っていたのに。ドリッパーでじっくり抽出したコーヒーの美味しいこと美味しいこと。

 それからは好みの味を見つけるため、あれこれ豆を買い漁った。布フィルターを使ったネルドリップや、色々な形状や材質のドリッパーを試してみた。
 そうしているうちに、近所のスーパーで見切り品として売られていたココナッツ風味のコーヒー粉がとても気に入った。けれど、随分前に偶然仕入れた輸入品で、売れ行きも悪かったためもう仕入れないこと、その商品が国内外の通信販売サイトを探しても販売していないことが分かり、とてつもなく絶望したりもした。


 少し前まで、胃に何かを入れたら空腹は凌げる、なんて考えていたのに。劇的な変化だ。

 そんな「食」の楽しみを教えてくれた健太さんには、本当に感謝している。

 健太さんとは、これから先もずっと一緒にいたい。ずっと健太さんの「美味い!」が聞きたい。
 一日三食、年間千九十五食を、健太さんと一緒に食べたいと。最近いつも思っている。願っている。


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