明日、きっと別れを告げます
気持ちが暗転したのはつい先ほどのこと。

「高野主任、奥さんいるよ」

私が、彼、――高野さんとお付き合いしていることは公にしていない。
だけど私は隠す気はなかったし、高野さんもそんな感じだった。

「だから、高野主任、奥さんいるよ」

「え……」

そんなことを教えてくれた同僚に耳を疑った。

高野さんに奥さんが?
結婚しているってこと?

想像すると、背中に嫌な汗が流れた。

けれど思い出してみてもそんな素振りはなかったし、普通にメッセージのやり取りもしてた。電話することは少なかった気がするけど、でもしないわけじゃない。

「やっぱり知らなかった?普段は知らないけど、少なくとも仕事中は結婚指輪してるから」

ザワザワと胸が騒ぎだす。
これが本当だったら、私は不倫していることになる。

「悪いことは言わないからさ、深い関係になる前に別れなよ」

「……う、うん」

ゾワリとした気分に身がすくむ。

私が好きな人は、彼氏だと思っていた人は、既婚者……?
ありえない。
そんなこと、ありえない。

あの時の「好きだよ」も「可愛い」も心からの言葉でしょう?
「一緒にいたい」とか「落ち着く」とか言って微笑んでくれたのも、私のためでしょう?
数々の思い出が疑問となって押し寄せてくる。

初めてシたときだって、あんなにも優しくて大切にしてくれたのに。

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