エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす

「そういえば、夕食は食べましたか?」

「ああ。新大阪駅で駅弁を買って新幹線の中で食べた」

「そうですか。じゃあ、お酒でも飲みます?」

リビングと隣り合わせになっているダイニングルームの一角には、ホームバーが設置されている。

なにを飲もうか考えながらダイニングに移動しようとすると、私を呼び止める声が室内に響いた。

「いや、なにもいらない。それより美桜と話がしたい」

龍臣さんがソファの座面を右手でトントンと叩く。

彼がなんの話をしようとしているのか見当はつく。

ジェスチャーにうなずいて隣に腰を下ろした。

「私、龍臣さんに謝りたいと思っていたんです。理恵さんの代わりですかなんて、ひどいことを言ってごめんなさい」

「いや。俺もあのときは元カレに嫉妬して冷静さを失っていた。嫌な気持ちにさせて悪かった」

会えない間ずっと心に抱えていた気持ちを早く伝えたくて先に口を開いたものの、彼もすぐに謝りの言葉を発する。

ふたりとも昔の恋愛相手に妬いていただけだったとわかり、どちらともなく手を握るとお互いの指を絡ませて短く笑い合う。

「過去の出来事がきっかけで、俺は愛する人をこの手で守りたいと強く思うようになった。だが、美桜を理恵の代わりだと思ったことは今まで一度もない。それだけは信じてほしい」

「はい。もちろんです」
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