エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす
「美桜が酔っ払って眠ってしまったからひと晩預かりますって、朝比奈さんが連絡をくれたからよかったけれど、突然家を飛び出すなんて心配するでしょう?」
「えっ? 朝比奈さんから連絡があったの?」
「ええ、そうよ。飲ませすぎて申し訳ありませんって謝られたわ」
母親が首を左右に振ってため息をつく。
なぜ、このタイミングでお見合い相手の名前が出てくるのかわからない。だって私は、朝比奈さんに会ってなどいないのだから。
一瞬、母親が嘘を言っているのではないかと疑ったけれど、そんなことをしてもなんのメリットもない。
じゃあ、いったい誰が朝比奈さんの名前を騙ってウチに連絡してきたのだろう。
少しの間、頭を悩ませているとある人物の顔が頭に浮かんだ。
なんでもっと早く気づかなかったのだろうと思いながら、階段を駆け上がって自分の部屋に向かう。そしてキャビネットの引き出しにしまい込んでいたお見合い写真を取り出し、ベージュ色の表紙を開く。するとそこには、ひと晩をともに過ごした名前も知らない彼の姿があった。
「やっぱり……」
昨日の出来事をひとつひとつ思い返してみると、不自然な点がいくつかあったと気づく。