エリート御曹司は独占欲の募るまま、お見合い令嬢を愛で落とす

「クラシックは聞くか?」

朝比奈さんがジャケットの内ポケットに、スマホをしまいながら尋ねてくる。

突然、脈絡のない話題を振られて戸惑ったものの、クラシック好きの両親の影響で何度かコンサートを鑑賞したことがある。

「はい」

「それはよかった。午後四時開演のコンサートのチケットが取れたんだ」

普段は冷静な彼の声が、心なしか弾んでいるように聞こえる。

きっと朝比奈さんもクラシックが好きで、コンサートに行けるのがうれしいのだろう。

「チケットって、そんなに急に取れるものなんですか?」

上機嫌な様子を微笑ましく思うと同時に、素朴な疑問が湧き上がる。

「交響楽団の副理事と知り合いでね。今回は関係者席を用意してもらった。今日はふたりとも正装だし、いい音楽を聞いてリラックスした時間を過ごしたいと思ったんだ」

「そうですか。ありがとうございます」

クラシックコンサートには厳格なドレスコードはないけれど、ジーンズなどのカジュアルすぎる服装での来場はNGだ。

思いがけずコンサートに行ける喜びを感じていると、朝比奈さんが長い脚を組んでシートに深くもたれかかった。
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