クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
「あの、それが……私がバイトしていたのは個人の事務所で。セキュリティとか、システムの専門部署はありませんでした。アクセスデータを管理していたとは思えないので、たとえ不正使用があったとしても、バレることもなかったかと……」


私は、意味もなく恐縮した。


「個人の事務所……うちみたいな?」


質問を挟む菜々子さんの隣で、所長がムッと顔をしかめた。


「確かに、うちの事務所にネットセキュリティの専門家はいませんが、ちゃんと外部に委託してますよ。小さくても、法律事務所ですから」

「も、申し訳ありませんっ。そういう意味ではなく、規模をイメージする点で、こんな感じかなあと……」


弾かれたように背筋を伸ばして弁解する彼女を余所に、先生たちは額を突き合わせる。


「サイバー犯罪対策課の案件かな」

「残念ながら、知り合いはいませんねえ」


さりげなく事件を探る会話を無視して、菜々子さんが私の方に身を乗り出した。


「ねえ。そのアクセスって、凛花ちゃんの勤務時間帯だったの?」

「は、はい。私は大学の講義が終わった後、夕方から午後九時頃までバイトに入っていて、その時間に集中していたそうです」


私は、昨夜遠山さんから聞いた内容を説明した。


「でも、勤務日は不定期だったので、私が勤務していた時かはわからなくて……」
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