クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
奎吾さんは静かに目を伏せ、


「凛花。悪いが、そこの紙袋に部下が買って来てくれたシャツが入ってるから、取ってくれないか?」


そう言って、私を中に促した。
彼の目線の先に、言われた通りデパートの紙袋があるのを見つけて、私はゴクッと唾を飲む。
紙袋の中からビニール袋に入ったワイシャツを取り出し、躊躇いながら彼の前まで歩いていった。
奎吾さんは私からビニール袋を受け取ると、ギシッと音を立てて椅子から立ち上がる。


「今日はこのまま直帰の許可が下りたから、一緒に帰……」


彼が折り皺の多いシャツに袖を通しながら話す途中で、


「ごめ、なさい……」


私は両手で顔を覆い、くぐもった声で謝罪をした。


「凛花?」

「ごめんなさ……奎吾さん、ごめんなさい……」


嗚咽を堪えきれず、ひくっひくっとしゃくり上げると。


「凛花。顔を上げてくれ」


奎吾さんが、私の両手を取った。
おずおずと顔を上げた私の頬を、右手の親指で遠慮がちになぞり、


「よかった。どこにも傷はないな」


心の底からホッとしたように、表情を和らげる。
そんな彼に、私の涙腺が崩壊した。


「私なんか。私のことなんか……! 私のせいで、奎吾さんは大怪我したのに……」
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