クールな警視正は新妻を盲愛しすぎている
私の職歴は短い。
大学四年間、政治家の親類の個人事務所でアルバイトをしていたのと、大学卒業後に就職した一般企業の財務部での事務職だ。
その企業に在職したのは、奎吾さんとの結婚まで、たった七ヵ月。
仕事の面白さがやっとわかってきた頃だったけど、官僚の過酷な勤務実態を揶揄して不夜城などと呼ばれる霞が関勤務で、激務の旦那様の生活や健康を守るために、私が外で働いていては心許なかったから退職した。


でも、奎吾さんの激務は私の想像を遥かに超えていた。
まともな休日がほとんどない上、警視庁に泊まり込むことも多く、家に帰ってきても寝るだけ。
もちろん家で食事をとることはなく、夫婦揃って食卓を囲むなんて奇跡に等しい。


私は一人の時間を持て余すばかりで、父に紹介してもらい、半年前から個人法律事務所の事務員として働き始めた。
父と旧知の仲の所長の他、男性の弁護士先生が二人いる。
そして、私より二つ年上のパラリーガルの女性が一人。
所員計五人の、こぢんまりした法律事務所だ。


私が総務省次官の娘で警察庁官僚の妻ということを、所長が話さずにいてくれるから、皆気を遣わずフレンドリーに接してくれる。
< 27 / 213 >

この作品をシェア

pagetop