初恋幼馴染みに求婚されました
「私のお弁当、全然いいもの入ってないよ?」

快く“いいよ”と言えないことが辛い。
本当のことを言うと、もう少し待ってほしい。

「梨華が作るものなら何でもいいよ」

本気だろうか。
普段私のイマイチな料理を食べているのだから、お昼くらいはお腹を正常なもので満たしてあげてほしい。

失敗作だらけのお弁当は申し訳なさすぎる。

今日の卵焼きは焦げてたし、ベーコンのアスパラ巻きはうまく包めずバラバラになったし、肉団子は水分が多くべちゃっとなり形が保てていなかった。

「でも……絶対外で食べた方が美味しいよ」

「俺は梨華の料理が食べたい。ダメか?」

宗君が私の顔を覗き込んだ。
その目は期待交じりでいつもカッコよい彼が可愛く見える。

「……わかった」

大好きな彼のお願いを断れるはずがない。
不安しか感じないというのに、受け入れてしまった。




初めて2人分のお弁当を作った日、私は父の生け花番組のアシスタントを行うためにテレビ局を訪れていた。

最近では、生け花の文化を若い人たちに取り入れてもらいたいという思いから、自由に生けられるスタイルの自由花を取り扱うことが増えつつある。

それでも花たちの形状や質感を気にしつつ生ける必要があるので、父は基本の形については毎回伝えることは忘れない。

普段より早起きし慣れない料理をしてきたため、気を抜くと眠気で意識がぼんやりとし、どこか別の方へいってしまう。いけない……この後、契約店の生け込みが多数入っているのに。
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