8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
 フィオナも泣きたい気分だ。どちらかと言えば優等生気質の手のかからないオリバーが、こんなにも心を痛めている。

「大丈夫よ。オリバー。母様はここにいるからね」

 オリバーの手を握って言い聞かせる。

「とにかく、今日はここまでにしましょう。ドルフもありがとう。疲れたでしょう」
『フィオナも寝ないと体に悪いぞ』
「ええ。でも一日くらい無理しても平気よ。この子がうなされているならば、傍にいて安心させてあげたいの」

 フィオナは椅子を持ってきて、ベッドのそばに置き座った。

『……お前は、グロリアに似ているな』

 チャドがぽそりと言い、フィオナは聞いたことのない名前に首をかしげる。

「グロリア?……誰?」
『勝手な感傷だ。気にするな』
「……わかったわ」
『オリバーが元気になること、我も願っている』

 チャドはそう言うと、こそこそと部屋を出て行った。
 ドルフはフィオナのそばにドンと陣取る。

「ドルフも休んでいいわよ」
『今の状態のお前たちを放っておけるわけがなかろう。そうでなくても、オスニエルに知られたら殺されそうだ』
「……ドルフなら勝てるじゃない」
『悪かった自覚があるから、一発くらいは文句も言わずに受けるつもりだ』

 ドルフはそう言うと、フィオナの頬をぺろりと舐める。急に涙があふれてきて、フィオナは思わず手で隠した。

「大丈夫よね。オリバー」
『ああ。そこまで弱い子ではないだろう』
「……あの時、止めていればよかった」
『それは俺も同じだ』

 フィオナはドルフの体毛に包まれながら少しだけ泣いた。母親になってから、久しぶりの涙だった。

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