8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3

 守りたくても、通常、親は先に死ぬ。それは自分にも言えることだとオスニエルは思う。

『お前も、……気を付けてやれ。オリバーのことを』
「オリバーか?」
『聖獣ってのは、力による上下関係が強いんだ。ルングレン山でも、俺の一族が一番強い。事実上そこの長となる。……たまに野心のあるやつがいて、こちらの寝首をかこうとしてくる。そんな奴らは、増幅能力のあるやつを利用しようとするだろう』
「オリバーが狙われるっていうのか?」
『オリバーだけじゃない。リーフェもだ。あいつらは、力はあるくせにその価値をわかっていないからタチが悪い』
「なるほど」
「ん……」

 フィオナが眉を寄せ、寝返りを打とうとして動けずに唸る。そして、ゆっくり目を開けた。

「悪いな、起こしたか」
「……オスニエル……様?」

 フィオナは自然に笑顔を浮かべ、「あのね、今日、子供たちが……」と話し出す。まだ半分、夢の中にいるようだ。

「ああ」

 オスニエルは相槌を打ちながら、妻の表情を眺める。見ているだけでこんなにもいとおしい存在がこの世にいることが、奇跡のようだ。

「そして、ドルフが……ね……」

 再び眠りに落ちるフィオナを眺め、彼女の額にそっとキスを落とす。

『最後は俺のことを話していたな』
「何勝ち誇った顔をしているんだ」

 耳をピンと立ててドルフが言い、オスニエルが反論する。くだらない小競り合いの始まりだ。

「まあ、フィオナの話を聞くのは、明日の楽しみにするか。俺も休むよ、ドルフ」
「ああ。さっさと寝ろ」

 オスニエルがフィオナに寄り添うようにベッドに体を横たえると、ドルフもカーベットの上で丸くなる。
 フィオナの銀色の髪を、節くれだった指で梳きながら、オスニエルは目を閉じる。
 夢の中でも、愛する妻を共にいられることを願いながら。

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