8度目の人生、嫌われていたはずの王太子殿下の溺愛ルートにはまりました~お飾り側妃なのでどうぞお構いなく~3
 フィオナとアイラはオリバーが食事をとるのを見守った後、各自部屋に戻っていった。
 フィオナはまだ心配そうにしていたが、オリバーがもう大丈夫だからと言ったのだ。

 湯あみも終え、部屋に戻り、机の上のチャドの寝床を見て、ぎくりとする。
 カサカサと動く音がするから、起きてはいるのだろうが、彼は話しかけてこない。オリバーも何と言ったらいいのかわからず、ただ黙ってベッドにもぐりこんだ。

 それまでずっと寝ていたこともあり、眠気はなかなか訪れない。やがて何者かが入って来た気配がして、飛び起きると、そこには聖獣姿のリーフェがいた。

「リーフェ?」
『オリバー、起きてる?』
「アイラと寝ていたんじゃなかったの?」

 アイラが子犬姿のリーフェを連れて行くのを最後に見たオリバーはそう言ったが、リーフェは『アイラの寝言がうるさいから出てきた』と言うと、オリバーに背中を向ける。

「どうしたの?」
『夜の散歩、行こう?』

 リーフェはあまり人を背中に乗せたがらない。だから散歩に誘われるなど初めての経験だ。驚きつつ、オリバーは黙って頷いた。

 夜の空気は冷たい。ドルフと違い、リーフェは時を止めることはできないので、飛び立つときはものすごく気を使った。人に見つからないよう、ドルフの時よりもずっと上空を飛んでいる。

「リーフェは、人を乗せて飛ぶのは嫌いなんじゃないの?」

 オリバーがずっと疑問に思っていたことを言うと、リーフェは少しだけ振り向いて頷いた。

『嫌いだよ。でもこうでもしないと、オリバー、話を聞いてくれないじゃん』
「……リーフェ、僕と話をしたいの?」

 オリバーは、リーフェは人のことには興味がないと思っていた。構われて嫌がるわけではないが、特段かまってほしがっていないという印象があったので、あくまで自分の気分が優先で、オリバーやアイラのことは、加護を与えてしまったから面倒を見ている程度なのだと。

 たどり着いたのは、ルーデンブルグの湖だ。
 相変わらず清浄な空気が漂っている。リーフェはこの空気が気持ちいいのか尻尾を振っていた。
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