幼馴染は分からない【完】



「あ、れ、れん…おはようっ」


五月中旬。朝はまだちょっとひんやりしている季節。



眠い目を擦りながら、家から出たタイミングと同時に隣の家から出てきた私の幼馴染に挨拶をする。



「……れんって呼ぶな。」



冷たい目線と共に、向けられた言葉。
そんな目線に体が強張る。


「ごめ…横山くん、」



咄嗟に呼び直すと一度私を睨んで、スタスタと歩いて行ってしまった。



はあ、今日も冷たいなあ。昔は優しかったのにな。


私、青山つむぎは高校2年生で身長は150センチと小さく、運動も勉強も全然で、人前で話すことが苦手で引っ込み思案なせいか友達は少ない。



幼馴染の横山れんは、同じ高校に通う同級生。整った顔立ちな上に身長は185センチで、運動だって勉強だって出来る。


もちろんすごくモテる。


そんなれんは中学に入るなり、私と家が隣同士の幼馴染だということを隠すように言ってきて、それっきり私に対する態度が急変して冷たくなってしまった。



…私以外には優しいのに。


本当はれんって呼びたいのに、苗字で呼ぶように言われている。




そして、れんは私の好きな人。



冷たくされても嫌われてもどうしても嫌いになれない。

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