不協和音ラプソディ
「前みたいに、周囲も自分も、思わず唸るような、そんな曲を生み出したいって、心は叫んでるはずだよ?
できた曲を、私じゃなく、この女(ヒト)に先にみてもらってたことが、何よりも浬の本心を証明してる。
浬を本質的に満たせるのは、私じゃないの」
浬にとって音楽は、空気と一緒。
無くなったら呼吸ができない。生きていけない。
私と音楽どちらか、なんて、二者択一で並べていい2つじゃない。
浬は音楽を愛し、愛され、選ばれた人。
浬にとって、圧倒的、絶対的なそれに、私は嫉妬をして、勝ちたいとさえ思っていたのかもしれない。
私が、浬から音楽を奪っていた。
その罪滅ぼしでもするように、必死になって捲し立てる私は、間違いなく、滑稽なのかもしれない。
それでも、きっとこれが、浬にできる最後のこと。
絶対に説得してみせると話しながら、どうしたって目尻に溜まってしまう水は、私の声を震わせてきて鬱陶しい。
「…っ、」
「…浬くん、この子にここまで言わせたんだから、あなたが返せる答えは、ただひとつよ。それ以外にない」