不屈の御曹司は離婚期限までに政略妻を激愛で絡め落とす

 やっと終わった……。ドキドキから解放された私は、ホッとして後ろを振り返る。

「ありが――」

 お礼を口にしようとしたら、斗馬さんの顔が眼前に迫っていた。

 長い睫毛を伏せた彼が、私の唇を奪う。髪を乾かしている間よりもずっと大きな鼓動音が、耳の奥で鳴り響いた。触れ合う唇が、熱い。

「……不意打ち、成功だな」

 数秒ののち、唇を離した彼が息のかかる距離で呟く。蕩けそうな色の瞳に私を映し、悪戯っぽく微笑んでいる。

「は、反則です、こんなの……っ」

 一瞬の隙をつかれてしまったのが悔しくて、私は前に向き直って俯いた。

 赤くなっているであろう顔を隠すため、膝を立ててそこに顔を埋める。

 斗馬さんはそんな私をふわりと後ろから抱きしめ、耳元で囁く。

「卑怯な反則を犯してでも、千帆の心を取り戻したいということだ。こう見えて焦っているんだよ。きみが思うよりずっと」

 ……本当?

 どこか頼りなげな彼の声音に、ほんの少し頑なな心が緩む。顏を上げたら、耳にそっと口づけをされて肩が小さく跳ねた。

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