転移したら俺に三十点をつけた女性にそっくりな公爵令嬢が隣国の王太子殿下に寵愛されて妃殿下になりました。
【17】真実
―翌週の日曜日―
先週二人きりでデートした美梨と修は毎日メールや電話を欠かさないほど親密になっていたが、昂幸には悟らないように寝かしつけたあとに、電話で愛を深めた。
いつものように修が美梨のマンションに遊びに来た。今日はゴルフの接待もあり、時刻は午後六時を過ぎていた。
二人は昂幸には見られないように、玄関先でキスを交わす。昂幸の足音とリビングのドアノブが音を鳴らし、二人はパッと体を離す。
いつもと違う二人の慌てた様子に、昂幸は思わず首を傾げた。
「サンタのおじちゃん、どうしたの? 上がらないの?」
「あ、上がってもいいかな」
「うん、いいよ。晩ご飯は焦げたハンバーグだけど。食べたら一緒にゲームしよう」
「タカ、焦げたハンバーグはよけいでしょ」
美梨は笑って誤魔化した。
「昂幸君に新しいゲームを買ってきたんだ。人気キャラクターの人生ゲームだよ」
「人生ゲーム? 秋山さんって本当にサンタのおじちゃんだね。毎週のようにプレゼント持って来なくていいよ。king不動産ってそんなに給料いいの? ちゃんとご飯食べてる? お母ちゃんの焦げたハンバーグより人生ゲームの方が高いでしょう」
「こら、タカ。秋山さんに失礼でしょう。子供は素直に『ありがとう』でいいのよ」
「はい、サンタのおじちゃんありがとう」
修と美梨は顔を見合わせて笑った。
「俺はいつの間にか愛称が『サンタのおじちゃん』になってしまったな」
「秋山さん、タカに気を使わないで。毎週プレゼントはいらないから。遊びに来てくれたり、遊びに連れて行ってくれるだけで、私達にはプレゼントなんだからね」
「美梨、ありがとう」
「サンタのおじちゃん、今、お母ちゃんのこと美梨って呼んだ?」
「わ、わ、違うよ。美梨さんだよ。ほら、いつまでも中西さんっていうのもね」
修はつい『美梨』と口走りアタフタしている。
「じゃあお母ちゃんも秋山さんじゃなくて、『修さん』でいいんじゃない? 俺は『タカ』でいいよ。サンタのおじちゃん」
「タカって呼んでいいのか?」
「うん、タカでいい」
修の瞳が潤んでいるのを、美梨は見逃さなかった。そっとティッシュを修に差し出す。昂幸に認められた気がして、美梨も嬉しかった。
夕食のあと三人で人生ゲームを楽しみ、圧倒的勝利をしたのは昂幸だった。昂幸と修は二人で仲良くお風呂に入り、寝かせつけてくれるほど昂幸とも仲良くなっていた。
昂幸を寝かせつけてくれた修はリビングに戻り、美梨をじっと見つめた。
「やだ……。なぁに? 恐いな……。ビール飲む?」
「美梨、昂幸君はB型だよな」
「どうしてそれを?」
「お風呂で昂幸君から聞いたんだ。随分前になるけど、俺の血液型を聞いたよな。あれはどうして? 美梨はA型なんだよね? 三田さんがB型なのか?」
一瞬、美梨の顔が強張った。
「あれは別に深い意味はないのよ。三田さんはなんだっけ? 覚えてないわ」
「嘘だろ? 美梨は俺の血液型を確かめたかったんじゃないのか? 三田さんはB型じゃないんだろう。離婚の原因はそうだよな?」
修の顔は真剣で誤魔化すことは出来なかった。三田正史は三田ホールディングスの後継者だ。三田銀行の代表取締役社長、ネットで検索すれば正史の血液型くらいすぐにわかってしまう。
でも美梨はまだ迷っていた。
「美梨はA型、確か、この間三田さんもって……言いかけたよな」
「そうだっけ? 忘れたわ」
「美梨、話をはぐらかすな。大切な話をしているんだよ」
「……修」
「昂幸君は耳の横にホクロがあるよな。俺もあるんだよ。知らなかっただろう。それに俺が幼少期の写真と昂幸君はよく似てる」
「そんなの偶然だよ」
「偶然? 美梨頼むよ。本当のことを教えてくれ、昂幸君は俺の子供なのか? あの夜に授かった子供なのか?」
修が美梨を両手で抱きしめた。
「美梨、真実が知りたいんだ。このままでは苦しいんだ」
「昂幸は三田正史の子供よ。離婚した今も三田は昂幸のことをそう思ってる。勿論、昂幸も三田を父親だと慕ってる。血の繋がりはなくても、あの二人は親子なのよ」
「……血の繋がりはなくても?」
修が一瞬息をのむ。
「そうよ。親子は血の繋がりだけじゃない。でも昂幸は……」
美梨の言葉に修の瞳の奥は明らかに動揺していた。
「昂幸は……あなたの子供です」
「俺の……子供……。離婚の原因はやはり俺だったのか……」
修は美梨を抱き締めていた手をほどくと、カーペットに押し倒した。
「驚くよね。ごめんなさい。でも、私はあなたに責任を取ってほしいとか、そんなことは望んでいないから。昂幸のことは今までどおりでいいの。負担に感じないで」
先週二人きりでデートした美梨と修は毎日メールや電話を欠かさないほど親密になっていたが、昂幸には悟らないように寝かしつけたあとに、電話で愛を深めた。
いつものように修が美梨のマンションに遊びに来た。今日はゴルフの接待もあり、時刻は午後六時を過ぎていた。
二人は昂幸には見られないように、玄関先でキスを交わす。昂幸の足音とリビングのドアノブが音を鳴らし、二人はパッと体を離す。
いつもと違う二人の慌てた様子に、昂幸は思わず首を傾げた。
「サンタのおじちゃん、どうしたの? 上がらないの?」
「あ、上がってもいいかな」
「うん、いいよ。晩ご飯は焦げたハンバーグだけど。食べたら一緒にゲームしよう」
「タカ、焦げたハンバーグはよけいでしょ」
美梨は笑って誤魔化した。
「昂幸君に新しいゲームを買ってきたんだ。人気キャラクターの人生ゲームだよ」
「人生ゲーム? 秋山さんって本当にサンタのおじちゃんだね。毎週のようにプレゼント持って来なくていいよ。king不動産ってそんなに給料いいの? ちゃんとご飯食べてる? お母ちゃんの焦げたハンバーグより人生ゲームの方が高いでしょう」
「こら、タカ。秋山さんに失礼でしょう。子供は素直に『ありがとう』でいいのよ」
「はい、サンタのおじちゃんありがとう」
修と美梨は顔を見合わせて笑った。
「俺はいつの間にか愛称が『サンタのおじちゃん』になってしまったな」
「秋山さん、タカに気を使わないで。毎週プレゼントはいらないから。遊びに来てくれたり、遊びに連れて行ってくれるだけで、私達にはプレゼントなんだからね」
「美梨、ありがとう」
「サンタのおじちゃん、今、お母ちゃんのこと美梨って呼んだ?」
「わ、わ、違うよ。美梨さんだよ。ほら、いつまでも中西さんっていうのもね」
修はつい『美梨』と口走りアタフタしている。
「じゃあお母ちゃんも秋山さんじゃなくて、『修さん』でいいんじゃない? 俺は『タカ』でいいよ。サンタのおじちゃん」
「タカって呼んでいいのか?」
「うん、タカでいい」
修の瞳が潤んでいるのを、美梨は見逃さなかった。そっとティッシュを修に差し出す。昂幸に認められた気がして、美梨も嬉しかった。
夕食のあと三人で人生ゲームを楽しみ、圧倒的勝利をしたのは昂幸だった。昂幸と修は二人で仲良くお風呂に入り、寝かせつけてくれるほど昂幸とも仲良くなっていた。
昂幸を寝かせつけてくれた修はリビングに戻り、美梨をじっと見つめた。
「やだ……。なぁに? 恐いな……。ビール飲む?」
「美梨、昂幸君はB型だよな」
「どうしてそれを?」
「お風呂で昂幸君から聞いたんだ。随分前になるけど、俺の血液型を聞いたよな。あれはどうして? 美梨はA型なんだよね? 三田さんがB型なのか?」
一瞬、美梨の顔が強張った。
「あれは別に深い意味はないのよ。三田さんはなんだっけ? 覚えてないわ」
「嘘だろ? 美梨は俺の血液型を確かめたかったんじゃないのか? 三田さんはB型じゃないんだろう。離婚の原因はそうだよな?」
修の顔は真剣で誤魔化すことは出来なかった。三田正史は三田ホールディングスの後継者だ。三田銀行の代表取締役社長、ネットで検索すれば正史の血液型くらいすぐにわかってしまう。
でも美梨はまだ迷っていた。
「美梨はA型、確か、この間三田さんもって……言いかけたよな」
「そうだっけ? 忘れたわ」
「美梨、話をはぐらかすな。大切な話をしているんだよ」
「……修」
「昂幸君は耳の横にホクロがあるよな。俺もあるんだよ。知らなかっただろう。それに俺が幼少期の写真と昂幸君はよく似てる」
「そんなの偶然だよ」
「偶然? 美梨頼むよ。本当のことを教えてくれ、昂幸君は俺の子供なのか? あの夜に授かった子供なのか?」
修が美梨を両手で抱きしめた。
「美梨、真実が知りたいんだ。このままでは苦しいんだ」
「昂幸は三田正史の子供よ。離婚した今も三田は昂幸のことをそう思ってる。勿論、昂幸も三田を父親だと慕ってる。血の繋がりはなくても、あの二人は親子なのよ」
「……血の繋がりはなくても?」
修が一瞬息をのむ。
「そうよ。親子は血の繋がりだけじゃない。でも昂幸は……」
美梨の言葉に修の瞳の奥は明らかに動揺していた。
「昂幸は……あなたの子供です」
「俺の……子供……。離婚の原因はやはり俺だったのか……」
修は美梨を抱き締めていた手をほどくと、カーペットに押し倒した。
「驚くよね。ごめんなさい。でも、私はあなたに責任を取ってほしいとか、そんなことは望んでいないから。昂幸のことは今までどおりでいいの。負担に感じないで」