転移したら俺に三十点をつけた女性にそっくりな公爵令嬢が隣国の王太子殿下に寵愛されて妃殿下になりました。
【10】絡んだ糸
―翌日―
レイモンドはいつものように執事室に向かった。その前にマリリンに会って直接話をしなければいけないと思った。
執事室に入る前に、メイド室でマリリンを捜したけどマリリンはメイド室にはいなかった。レイモンドはメイド専用の寄宿舎に向かった。
寄宿舎から出てきたメイドのアリーナ・ガーネットに聞いたが、昨夜マリリンは自分の部屋にはいなかったらしい。
アリーナがレイモンドの耳元で囁く。
「昨日マリリンの誕生日だったから、てっきり二人で外泊したと思ってたんだけど。ホテルじゃなかったの? レイモンドの部屋にも泊まってないとしたら、どこに泊まったんだろう。前にも似たようなことがあったけど、あの夜は部屋に戻ってきたから、てっきりレイモンドの部屋だと思ってたわ」
「前にも? 執事用のフロアは女人禁制だよ」
そういいながらも、レイモンドは明け方までメイサとベッドを共にしたことを思い出して、言葉を濁す。
「そうだよね。マリリンはどこに泊まったんだろう。ごめんなさい。私、もう仕事に行くわね」
アリーナはそう言い残すと、その場を立ち去る。マリリンの郵便受けの上には誕生日プレゼントが置かれたままだった。
(まさか……シェフ専用の寄宿舎?
マリリンはアリトラと以前から関係が……? 本気になっていたのは俺だけだったのか?)
メイドの寄宿舎とシェフの寄宿舎は隣接している。俺の視線は思わずシェフの寄宿舎に向いたが、仕事に遅れそうなためそのまま【昼休憩にいつもの場所で待っている。レイモンドより】と手紙をマリリンの郵便受けに入れて執事室に向かった。
執事室でコーディから引き継ぎを受け、レイモンドはメイサの部屋に向かった。その途中、廊下でアリトラと出くわす。アリトラは朝食を下げている途中だった。
公爵家では朝食は家族揃って会食室で召し上がるのが日課となっている。
「アリトラさん、それは?」
「メイサ様が体調が優れないとのことで、お部屋に朝食をお届けしました」
「アリトラさん、変なことを聞くようだが、今朝はいつも通りに仕事を?」
「はい。まだシェフ見習いですからね。皆さんよりも早く準備しないと。私の目標は公邸料理人ですから」
「公邸料理人ですか。それは頑張って下さい」
「レイモンドさん、私に何か御用でも?」
「いえ、何でもありません。失礼します」
アリトラは口角を引き上げ意味深に笑った気がした。それはアリトラとマリリンとの関係を疑っていたレイモンドだからこそ、そう見えたのかもしれない。
メイサの部屋に行くと、侍女のローザがいた。マリリンはメイサのベッドメイキングをしていた。
思わず『マリリン』と名前を呼びそうになったが、それをグッと抑える。
「メイサ様、昨夜パープル王国より一人でお戻りになり一体何処にいらしたのですか」
ローザはかなり怒り心頭だ。
「部屋にいたわよ。一足先に戻ったローザはもう休んでいたでしょう」
「パープル王国より公爵様から電話があり急ぎお部屋を確認しましたが、いらっしゃらなかったではありませんか」
「夜汽車ではなくタクシーで帰宅したから、まだ戻ってなかっただけよ」
「公爵様も公爵夫人もたいそうお怒りで、幸い王太子殿下が寛大なお方でメイサ様の自由奔放な行動をお許しになったから、婚約解消には至りませんでしたが、王太子殿下がお怒りになったなら破談だったのですよ」
「そう。それでもよかったのに」
「メイサ様! 言葉はお慎みなさい。公爵様がお呼びです」
「いやよ。今日は体調が悪いのよ。ローザも女ならわかるでしょう。トム王太子殿下との婚約の儀式で疲れてるの。お父様やお母様にはそう伝えて下さい」
「……畏まりました。そういうことにしておきましょう。今日はこのお部屋から出ないで下さいね」
「はいはい。マリリン、ベッドメイキングはもういいわ。執事と今後のスケジュールについて話しがあるの。席を外して下さるかしら」
「畏まりました。失礼します」
マリリンはレイモンドの顔を見ることなく退室してドアを閉めた。
レイモンドはいつものように執事室に向かった。その前にマリリンに会って直接話をしなければいけないと思った。
執事室に入る前に、メイド室でマリリンを捜したけどマリリンはメイド室にはいなかった。レイモンドはメイド専用の寄宿舎に向かった。
寄宿舎から出てきたメイドのアリーナ・ガーネットに聞いたが、昨夜マリリンは自分の部屋にはいなかったらしい。
アリーナがレイモンドの耳元で囁く。
「昨日マリリンの誕生日だったから、てっきり二人で外泊したと思ってたんだけど。ホテルじゃなかったの? レイモンドの部屋にも泊まってないとしたら、どこに泊まったんだろう。前にも似たようなことがあったけど、あの夜は部屋に戻ってきたから、てっきりレイモンドの部屋だと思ってたわ」
「前にも? 執事用のフロアは女人禁制だよ」
そういいながらも、レイモンドは明け方までメイサとベッドを共にしたことを思い出して、言葉を濁す。
「そうだよね。マリリンはどこに泊まったんだろう。ごめんなさい。私、もう仕事に行くわね」
アリーナはそう言い残すと、その場を立ち去る。マリリンの郵便受けの上には誕生日プレゼントが置かれたままだった。
(まさか……シェフ専用の寄宿舎?
マリリンはアリトラと以前から関係が……? 本気になっていたのは俺だけだったのか?)
メイドの寄宿舎とシェフの寄宿舎は隣接している。俺の視線は思わずシェフの寄宿舎に向いたが、仕事に遅れそうなためそのまま【昼休憩にいつもの場所で待っている。レイモンドより】と手紙をマリリンの郵便受けに入れて執事室に向かった。
執事室でコーディから引き継ぎを受け、レイモンドはメイサの部屋に向かった。その途中、廊下でアリトラと出くわす。アリトラは朝食を下げている途中だった。
公爵家では朝食は家族揃って会食室で召し上がるのが日課となっている。
「アリトラさん、それは?」
「メイサ様が体調が優れないとのことで、お部屋に朝食をお届けしました」
「アリトラさん、変なことを聞くようだが、今朝はいつも通りに仕事を?」
「はい。まだシェフ見習いですからね。皆さんよりも早く準備しないと。私の目標は公邸料理人ですから」
「公邸料理人ですか。それは頑張って下さい」
「レイモンドさん、私に何か御用でも?」
「いえ、何でもありません。失礼します」
アリトラは口角を引き上げ意味深に笑った気がした。それはアリトラとマリリンとの関係を疑っていたレイモンドだからこそ、そう見えたのかもしれない。
メイサの部屋に行くと、侍女のローザがいた。マリリンはメイサのベッドメイキングをしていた。
思わず『マリリン』と名前を呼びそうになったが、それをグッと抑える。
「メイサ様、昨夜パープル王国より一人でお戻りになり一体何処にいらしたのですか」
ローザはかなり怒り心頭だ。
「部屋にいたわよ。一足先に戻ったローザはもう休んでいたでしょう」
「パープル王国より公爵様から電話があり急ぎお部屋を確認しましたが、いらっしゃらなかったではありませんか」
「夜汽車ではなくタクシーで帰宅したから、まだ戻ってなかっただけよ」
「公爵様も公爵夫人もたいそうお怒りで、幸い王太子殿下が寛大なお方でメイサ様の自由奔放な行動をお許しになったから、婚約解消には至りませんでしたが、王太子殿下がお怒りになったなら破談だったのですよ」
「そう。それでもよかったのに」
「メイサ様! 言葉はお慎みなさい。公爵様がお呼びです」
「いやよ。今日は体調が悪いのよ。ローザも女ならわかるでしょう。トム王太子殿下との婚約の儀式で疲れてるの。お父様やお母様にはそう伝えて下さい」
「……畏まりました。そういうことにしておきましょう。今日はこのお部屋から出ないで下さいね」
「はいはい。マリリン、ベッドメイキングはもういいわ。執事と今後のスケジュールについて話しがあるの。席を外して下さるかしら」
「畏まりました。失礼します」
マリリンはレイモンドの顔を見ることなく退室してドアを閉めた。