【完結】終わった恋にフラグはたちません!

「え! 原稿、もう上がってるんですか? なら、担当の私に一言連絡くれませんか。担当が何も知らないなんて間抜け過ぎるので……」

そう言って、伊織は少し膨れた顔をして見せた。

(あ─……なんだよその顔、可愛すぎかよ─!)

伊織は昔から責任感が強い女性。前の会社で、彼女のせいでもないのに後輩をかばった代わりに処分を受けたことがあったっけ。

(その芯が強いところ全然変わってないなぁ─……それに膨れ顔も昔と可愛いままだし)

無意識だったのか、僕の手はいつの間にか伊織の頭を優しく包み込んでいる。ただ、何かしら伊織に触れていたかっただけかもしれないが。

「そういうところ、伊織は八年前と変わってないから安心した。気が強いところも優しいところも責任感強いところも……。でもまさか出版社に転職してるとは思わなかったよ」

そう話した途端、明らかに伊織の顔が段々と曇っていく。

(あ、あれ? 僕、何かおかしなことでも言ったかな)

すると、伊織は急に僕のよくわからないことを色々と聞いてきたのである。

「……あ─、やっぱり気付いてたんですね、私の性格。さっき私の雑なところ変わってないって言ってたし、もしかしたらって。……あの、変なこと聞くんですが……澪先生は、その、いつから、知ってたんですか? 結婚する前、それともその後? 私の性格が……嫌に、なったから離婚したんですか?」

僕は一瞬、頭が “?”になった。
正直、伊織の言う私の性格とはなんのことなのか……。伊織は責任感も強くて優しくて気が強いことは、付き合っている頃から知っていたこと。

(もしかして伊織……自分の性格をあれで隠していたつもりだったのか?
料理も頑張ってはいたけどいつも味薄かったし、漫画だって部屋には飾っていなかったけれど段ボールの蓋は開けっ放しだったし……結構、そのままの伊織だったと思うんだけど。
でも離婚理由……そっか、伊織はずっと気にしていたんだ。
ごめんね、伊織……)

< 110 / 110 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:10

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

表紙を見る 表紙を閉じる
“自分から誰かを好きになることはないと思っていた──君と出逢うまでは” 社員食堂でバイトをする、鳴宮 桜葉(23) ✕ 大手不動産企業に勤務するエリート会社員、院瀬見 岳(27) ✼*〜✼*〜✼*〜✼*〜✼*〜✼*〜✼*〜 田舎育ちの桜葉は心にある傷を負いながら大都会へ上京、大手不動産会社の社員食堂でアルバイトをしながら生計を立てていた。 そんなある日、ひょんな事から桜葉は顔面よし性格よし仕事もできるパーフェクトなエリート社員、院瀬見 岳と知り合う。 噂通り、優しい対応をする岳を尊敬し始めた矢先……岳の意外な一面に遭遇することになってしまったのだ。 更に岳にはどうしてもやり遂げなければならない野望があって──── 心に傷を負い、しばらく恋などしないと今の生活を懸命に生きる桜葉 ✕ 過去の悲しい出来事を機に、ある野望と復讐心だけに生きる岳 ── しかし、 桜葉の優しさや真っ直ぐな厳しさに触れる度、本気で女性を好きになったことのなかった岳の心に少しずつ変化が生じてきて…… ✩焦れ焦れな恋愛模様が始まります✩ 2023.7.26 start〜
表紙を見る 表紙を閉じる
《恋愛ストーリー》 ───☆★☆売れない漫画家・晴(26)は、【恋愛初心者・拓実が苦手・お酒好き・お節介・身だしなみ女子力0】の肩書を持つ女性。 ───★☆★その鬼担当編集者・拓実(32)は、【結婚直前・御曹司・ギャップあり・イケメン有能編集者・意地悪】の肩書を持つ男性。 拓実が結婚式を挙げる日を境に、ひょんなトラブルから晴と拓実はなぜか一緒に住むことに!? 漫画家と担当編集者というだけの関係だった二人のドタバタ恋愛劇。 ~**.****・****・****~ ※こちらの作品は去年、小説というものを初めて書いた作品です(ドタバタ恋愛模様ですが)。他サイトにも投稿していますが、次の新作を投稿するまでお楽しみ頂けたらと思い、投稿してみました。 (漫画家ネタが続いてしまってスミマセン💦)

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop