【完結】終わった恋にフラグはたちません!

──少女漫画……編集……異動……え、今日、から?!


美鈴から出た言葉のパーツを一気に組み立て理解に至った私は、慌てて廊下に設置してある掲示板へと走っていく。この掲示板は普通にスルーしてついさっき通り過ぎた場所、当分は自分に関係ないだろうとあまりよく見たこともなかった。

「……嘘、やだ本当? 漫画編集……少女雑誌部門への異動を発令する……」

まさか、自分の夢がこんなにも早く叶おうとは思ってもいないから、呆然として頭が真っ白な状態だ。

「あ─、立木君! ちょうど良かった」
「編集長、おはようございます! あ、あの、これは一体……」
「ああ、突然で申し訳ないんだけど立木君、今日から漫画編集室の方へ行ってもらえるかな。あちらさん今忙しいみたいで、なぜか立木君を欲しがっていてね。まぁこっちの仕事の引継ぎもあるし、しばらくは兼務という形になるかな」

偶然通りかかった絵本編集部の編集長 “鈴木 隆二(すずき りゅうじ)(四十三)” は、あまり細かいことを気にしない性格。
編集長としてその性格はいかがなものかとも思うが、この出版社で長年勤めあげているベテランだ。
だから今回の突然の異動もあまり深く考えていないご様子。

異動はめちゃくちゃ嬉しいけど、でも兼務って……忙しさを考えただけでも気が遠くなる……

「せんぱぁい、離れちゃってもたまにランチとかディナー、一緒に行きましょうね─」
「ありがと。美鈴ちゃんも仕事しっかりね!」
「はぁ─い、ほどほどにやっておきます」

ほどほどに、って……

そう思った時、現在の時間の流れが急に気になった私は、慌てて自分の腕時計に目を向けた。──針は九時五十分を指している。
衝撃な異動や美鈴のほのぼのとした雰囲気に気を取られ、もう少しで始業時間を過ぎてしまうところだった。

まずい! とりあえず、急いで漫画編集室へ向かわないと!

「じゃあ、美鈴さん! あとよろしくね!」

私はデスク周りの必要最低限な物を、近くにあった段ボールに適当に詰め、急いで二階にある漫画編集室へと向かったのである。

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