【完結】終わった恋にフラグはたちません!
しばらくその態勢を保ちつつ無言を貫くゆうちゃん。
「……ゆうちゃん? 大丈夫?」
「──全然、大丈夫じゃない」
ボソッと耳元で呟いたゆうちゃんは、私が今まで知っているゆうちゃんとは明らかに違う声のトーン……ううん、違う。一度だけ同じような雰囲気になったことがある。
あれは確か……、ゆうちゃんから離婚を言い渡された時と同じ雰囲気。
「伊織はさ、どうしてこんな無茶するの……あのぐらい僕だって避けられるのに、その間に入るなんて。伊織はそうやって昔から、いつも僕を守ろうとする……だからあの時だって」
……あの時?
自分の言いかけた言葉にハッとしたゆうちゃんは、慌ててその続きの言葉を飲み込んでしまう。
その代わりに抱きついていた体を更に密着させながら、ゆうちゃんは自分の想いを吐露していく。
「伊織に何かあったら僕は……死ぬほど辛いんだ。自分のことを一生許せなくなってしまう。だからお願い…もうこんな無茶はしないで」
「……ごめん、ゆうちゃん。ゆうちゃんが危ないって思ったら体が勝手に動いちゃって。…わかった、もう危ないことはしないから…本当にごめんね」
勝手な自分の行動でゆうちゃんを悲しませていたかと思うと、とても申し訳なくなってくる。
……確かに今思い返してみると、付き合っていた時も結婚していた時も、もちろんゆうちゃんに守られもしたが、自分も守りたいっていう気持ちも大きかったのは確か。ゆうちゃんに何かあれば助けたいと。
「ねぇ伊織……勝手だけど今の僕の気持ち、全部聞いてもらってもいいかな?」
「ゆうちゃんの、気持ち?」
項垂れ、頭を埋めていたゆうちゃんが、その顔をゆっくりと持ち上げ今度は寝ている私の顔近くまで持ってくる。
その距離、僅か十センチほど──相変わらずカッコイイゆうちゃんの顔面を前に、急に恥ずかしくなった私は自分の目先を横に外す……が、ゆうちゃんの大きな手によってその目先はすぐにまたゆうちゃんの顔近くへと戻されてしまったのだ。
今、病室にいるのは私とゆうちゃんの二人っきり。
……もしかしてこれは今、ゆうちゃんに告白する絶好のタイミングなのでは!?
「あ、あのゆうちゃん、私もねゆうちゃんに伝え……たい、こ──!?」
その先の言葉は突如、ゆうちゃんの柔らかい唇によって塞がれてしまった。
瞬間、ゆうちゃんの体に纏ってあった甘い香水の香りが、まるで媚薬のように一気に私の思考をも停止していく。
そして一瞬の驚きの感情もゆうちゃんの優しいキスによって安心感へと変わっていった。
この感触は忘れたくても忘れられない……とても優しい何もかもを許してくれるようなゆうちゃんのキス。