夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
 翌日、嶺奈は立花の自宅にいた。彼の自宅に訪れるのはこれで二回目。まだ、慣れずに少し居心地の悪さを感じる。

 彼女なのだから堂々としていればいいのに、そう出来ないのは、まだ恥ずかしさがあるからなのか。

 一服を終えた彼は煙草の火を消して、テーブルを挟んで、向かい合った嶺奈を見据える。
 
「一緒に暮らそうか」

「え」

 あまりにも唐突過ぎる彼の言葉に、嶺奈は一瞬、聞き間違いかと思った。
 
 彼の言葉は例えるなら『今から出掛けようか』くらいの軽いニュアンスだったからだ。

「同棲。嶺奈は嫌?」

「嫌とかじゃなくて、どうしてそういう話になったの? 展開が見えない」

「会えなくなっても、平気なんだ?」

「……仕事なら、仕方ないと思うわ」

「俺は、そうやって我慢されるのが一番嫌い」

 胸の内を見透かされて、逃げ場を失う。

 本当は寂しいし、会えなくなるのは嫌。

 でも、それを言ったところで、彼が無理をするのは分かっていた。だから、拒もうとしたのに。

< 72 / 145 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop