夏の終わりと貴方に告げる、さよなら
第三章
 離婚調停中の身である亮介は、嶺奈に忠告をした。

「離婚が成立するまでは、なるべく会うのも連絡を取ることも控えよう。相手はあの美緒だからな。
 
 もし、俺と嶺奈の関係が知られれば、何をされるか分かったもんじゃない。俺だけならともかく、嶺奈を危険に晒すのだけは嫌なんだ」

 亮介の言葉を素直に受け取り、嶺奈は頷く。

 彼の話を聞いていて、嶺奈が内心思っていたこと。……美緒という女性はとてもしたたかで、策士家だ。

 亮介を自分のものにするためなら、手段は選ばない。だから、こんなことになってしまった。

 二人を引き裂いたのは、美緒だ。

 その彼女が、二人の関係を知ってしまえば、間違いなく、不利になるのは亮介のほうで、私も不倫相手として、慰謝料を請求される可能性もある。

 一番の最悪の結末は、亮介が離婚を出来なくなってしまうことだ。

 そうならないために、亮介は嶺奈に釘を刺した。その覚悟はあるのかと──。

「でも、どうしても寂しいなら連絡してくれ。嶺奈にだけ我慢させるのはもう嫌だからさ」

「ありがとう……。でも、平気よ。我慢なら慣れてる」

 私は何度、過ちを犯せば気が済むのだろう。自身が背負った十字架は、あまりにも重すぎた。


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