私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
彼の家の近くでコンビニに寄った。
軽食と私のスキンケアグッズと、あともうひとつ、彼がカゴに入れたものがあった。

「紗絵が朝まで近くにいて、何もしないとか無理だから買うよ」

彼の家に泊まるのだ。
もちろん、そういう行為に及ぶ意識はあった。

それが現実味を帯びてきて、なんだかお互いに口数が少ないまま、彼の家に着いた。

「散らかってるけど」

「おじゃまします・・」

玄関からリビングに移動し、電気を付けようとした彼の腕を私はつかんだ。
彼が私の顔をのぞき込む。

「紗絵? どうした?」

「あの・・」

「ん?」

「私、ソファとかで落ち着いちゃったら、多分寝ちゃうと思う・・。だから・・その前・・に」

「でも・・・・。なんて言うか・・いきなりだと、それだけのために連れてきたみたいで」

今はまだ、さんざんアタマを使って神経が昂っているから目が冴えているけれど。
少しでも落ち着くと、疲れで深く眠ってしまいそうな気がしたのだ。

「・・いいの? 紗絵」

「うん・・いい」

「じゃ・・こっち、来て」

リビングの横の部屋は、明かりの付いていない寝室だった。
そこで始まる出来事を想像して、急激に鼓動が速くなる。

「蓮斗・・私・・」

「俺も緊張してる・・同じだよ」

お互いにぎこちなく笑うと、彼の両腕が私を包み、そのまま唇を重ねた。

そうしたいと思うふたりが身体の一部分でも重なれば、もう止めようもない。

「紗絵・・」

私を呼ぶ声も。
声を発する時に漏れる吐息も。

服を脱がす指先でさえ。

触れるもの全てが、私を虜(とりこ)にした。
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