私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
どの範囲で手術するのか決めきれないまま、日にちだけが過ぎていった。

生理が終われば普通に仕事もできるから、考えたり決めたりすることを、つい後回しにしてしまう。

子宮を残すのか、残さないのか。
どうしたらいいんだろう。


「紗絵」

「え? あ、何?」

「俺、来週系列の病院で研修があって、3日くらい泊まりでいないから」

「えっ」

「たまには俺がいないのもいいでしょ。ひとりでゆっくりしなよ」

「・・うん」

「さつきちゃんと、ご飯でも行ったら?」

「そう・・だね」

蓮斗、本当に研修・・?
あの日から何となく気まずい感じで、私と家にいるのが嫌なんじゃないだろうか。

「蓮斗、来週っていつから?」

「・・火曜だけど」

「その前に、蓮斗とデートしたい」

「あー、うん」

「・・無理にじゃなくていいんだけど」

「予定、確認しとくよ。じゃ、先に出るね」

「あ、ねぇ蓮斗・・」

ガチャン、とドアの閉まる音がした。

行っちゃった・・。
このところ、ほとんど話ができていない。

たまたま、なのか、わざと、なのか。
家にいる時間が、彼とすれ違ってばかりだ。

手術の話は、彼にとって不愉快な話なのだろう。

少ない機会に何度か口にしようとしたけれど、あからさまに避けられた。


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