私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜
ベッドに横たわる彼とふたりだけになり、ひとまずベッドサイドの椅子に座った。

「・・時計のガラス、割れちゃったんだ。直さなきゃね・・」

棚の上に置かれた私物の中に、時計があった。
転落した時の衝撃だろうか。

時計はまた同じものを買えばいいけれど、彼はたったひとりしかいない。
かけがえのない人なのだ。

「蓮斗・・いつもみたいに『紗絵』って呼んで?」

目を閉じたままの彼に呼びかけてみるけれど、返事は無い。
返事だけじゃない、他の反応だって何も無いのだ。

「蓮斗・・。ねぇ、蓮斗目を開けて・・・・」

手を握っても、握り返してくれない。
頬を撫でても、表情が動かない。

心臓は動いていて、身体も冷たくはないのに、何も反応が無い。

私はただこうしてそばにいるだけで、それさえ、彼が認識しているわけでもない。


何だろう、この言葉にできないモヤモヤとした感情は・・・・。


「助けなきゃよかったのに・・」


思わず、そうつぶやいた。

そんな自分が嫌になる。
彼が助けないなんて、ありえないのに。


「でも、蓮斗がこんなふうになっちゃうなんて、耐えられないよ・・」


私はぎゅっと両手を握って、目を閉じた。
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