私はあと何回、彼に恋をするのだろう 〜仕事とストレスと、そして恋と〜

彼は彼なりに、私は私なりに。
新しい役割に"やりがい"を感じるようになっていた。

「紗絵、俺さ･･腕が元のように使えるようになっても、いまやってること、続けていきたいと思うんだ。
だけど、勉強することも含めてそこに時間を費やすようになるから、ちょっと迷ってるんだよね」

「迷う？　どうして？」

「その･･他の誰かのために、紗絵に寂しい思いをさせるとしたら、それはどうなんだろう･･って。
前にさ、『私も、蓮斗とたくさん話したい』って言ってただろ？」

「うん････ずっとは寂しい･･かな。
だけど、蓮斗の考えてることも分かるよ。どうせなら、もっと知識をつけたいなって思うし」

もうちょっと考えてみるよ･･と言って、彼は私を抱きしめた。

「ありがとう･･蓮斗」

「ん？」

「私のこと･･考えてくれて」

彼は、チュッと軽く唇を合わせてから言った。

「なぁ、紗絵。できたら紗絵にも同じように思ってもらえたら嬉しいんだけど･･」

「うん･･？」

「患者さんや、会社の誰かに心を配るのも大事だし、仕事そのものも大事なんだけどさ。
まずは･･お互いを一番に考えないか？」

「お互いを･･一番･･に？」

「そう。俺たちにとって、俺と紗絵は代わりのいない存在だろ？　今回の病気やアクシデントで思い知ったからね。
仕事だから･･って、ただ相手に我慢させるんじゃなくて、俺は紗絵のことを、紗絵は俺のことを思いやれたらいいなって」

「うん･･私、蓮斗が目を覚ます前、ずっと後悔してた。いつもいつも、自分のことばかりだった･･って。蓮斗のこと、思いやれてなかった。
師長さんにも言われたよ。『これからも無理しちゃダメよ。坂本さんが悲しむから』ってね」

「思いやっていこうな、俺も、紗絵も」

彼は私の手をぎゅっと握った。

「蓮斗･･」

彼の優しさに、気持ちがあふれた。
返事の代わりに、私は彼の頬に手を伸ばして顔を近づける。

「そういう思いやりも、大歓迎」

彼は微笑んで、目を閉じた。