美しすぎる魔王様に助けられて異世界で偽装結婚? でも美容師としても働きますよ。
第2話 魔王様の婚約者

このパーティーが始まってから、どのくらいの時間が経ったのだろうか。
慣れない場所という事もあるが、だいぶ疲れが出て来ている。

(…このパーティーはいつまで続くのかな…魔王様の婚約者は決まったのかな…)

早くこのパーティーが終わらないかと思い始めた時だった。

突然、それまでゆっくりと椅子に座っていた魔王様が立ち上がったのだ。
皆が魔王様へと注目した。
魔王様は会場をゆっくりと見回すと、静かに口を開いた。

「そろそろこのパーティーもお開きにしようと思うが、ここで重要な発表がある。」

このパーティーの目的は婚約者候補を選ぶことだ。
恐らく重要な発表は、婚約者候補を決めたという事だろう。
会場中がザワザワとしている。


「私の婚約者候補は決まった。」


(…そうだよね…どこのご令嬢を魔王様は選んだのかな…ちょっと楽しみ。)

私はまるでゲームの中の展開を見るように、ワクワクしていた。


「私の婚約者は…ヒグチマユにする。」

(…なるほど、ヒグチマユ・・・っえ?…それって…樋口真由?…私!!)

「な…な…な…何ですって?」


自分の名前だと気が付き、驚きから私は口をあんぐりと開けて固まった。
何が起こってしまったのだろうか。
何かの聞き間違えだろうと自分に言い聞かせた。

「真由…前に出てこちらへ来てくれ。」

魔王様が私に向かって手を差し伸べている。
どうやらこれは聞き間違えではなさそうだ。

なんという事が起きてしまったのだろう。

すると、ティムが笑顔で肩を叩いた。

「真由、魔王様が呼んでいるよ…早く前に出たほうが良いよ。良かったね!」


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