隣人さん、お世話になります。

新しい生活

「あ! おはようございます!」


三日前に引っ越してきた部屋の鍵を締めていると、隣の部屋のドアがガチャと開いた。
その部屋の住人は片桐良平(かたぎり りょうへい)さん。引っ越した日に挨拶済みだ。
片桐さんは物静かな人のようで、挨拶をするとピクっと頬を引き攣らせて小さな声で「おはようございます」と言うの。その後すぐに顔を真っ赤にさせて俯いちゃうから、きっと照れ屋さんだ。


「じゃあ失礼します!」


ペコッとされたから挨拶タイムも終わりと判断し、その場を足早に去る。
私、間宮希子(まみや きこ)はこの春大学進学を機にド田舎から上京してきた。
私には両親は居ない。幼い頃に事故にあって二人一気に喪ってしまう。残された私は父方の祖父母に引き取られ大事に育ててもらった。寂しいなんて思ったことない………嘘、ほんの少しは思ってた。
友達は皆両親が参加するものを、私は参加しないか祖母が来る。それが嫌なわけじゃないし嬉しかったけれど、やはり友達とは違う疎外感とか寂しさを感じていて、その気持ちをバネして兎に角勉強を頑張った。
そして今の大学の合格発表の数日後、祖母が病気で亡くなった。
祖父は暫く塞ぎ込んで痩せてしまい、そんな祖父を残して私は田舎を去って良いのかって悩んだ。
大好きなおじぃちゃんが心配。田舎で就職して、祖父とのんびり過ごすのもありだよなぁって。
でも祖父は言った。『せっかく合格したんだから大学へは行きなさい。ばあさんもそれを望んでるさ』と。

という訳で祖父に背中を押してもらい上京した私は、毎日生活費の為にバイトをしながら大学へ通っている。
入学費用まではお世話になっちゃったけど、後は自分で頑張るって決めたから。
なのにさぁ〜、なんでこうなるのかな。神様は不平等だ。
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