ハライヤ!
「何かあったの?」
「何でもありません。それより、急がないと彼を見失ってしまいます」
葉月君は、さっきのモヤには気づいていない様子。
もちろん彼も霊感はあるはずなのに気づかなかった。それほどに、小さな力しかなかったのです。
気になりますけど、今は後回しにしましょう。それよりも、ホームレスの霊を追わないと。
私達は逃げたホームレスの霊を追いかけて、廊下の隅まで追い詰める。
逃げ場を失った彼は、焦ったように声をあげます。
「や、やめろぉ、来るなー!」
「そういうわけにはいきません。大丈夫、怖くないですから、大人しくしててくださいね。迷う者、荒ぶる魂、鎮まりたまえ……浄!」
「うあぁぁぁぁっ⁉」
光に包まれたホームレスの霊はだんだんと消えていって、浄化完了。
とりあえず、依頼されていたお祓いはこれで終了……なんですけど。
「一丁上がりだね。って、トモ。怖い顔してどうしたの?」
「それが、さっきから妙な気配がしていて……っ、そこです!」
振り返った先、廊下の隅。
そにはさっきあったのと同じ、黒いモヤの塊があったのです。
相変わらず集中しなければ気づかないくらい力は弱いですけど、悪いものを感じます。
「なんだあれ? あんなのがいるって、よく気づいたね」
「実は、さっきも絡まれたのですよ。けど、本当に何なのでしょう?」
悪い気感じはしますけど、幽霊でも妖でもありません。まあ何にせよ、祓っておいた方がいいですね。
近づくと手をかざして、さっきと同じように浄化を始めます……が。
「迷う者、荒ぶる魂、鎮まり……えっ?」
モヤに触れた瞬間、突如頭の中に、何かの映像が浮かんできました。
な、何ですかこれは?
まるで情報を無理矢理、頭に叩き込まれたよう。
脳裏に映し出されたのは、うちの学校の制服を着た、三人の女子生徒の後ろ姿でした。
これは、誰かの記憶? 混乱していると、冷たい声が響きました。
『水原さんってさあ、なんか調子乗ってるよね』
え、私?
女子生徒の一人が放ったのは、まさかの私の名前。
すると、他の二人もそれに同意します。
『あの天然だって、どうせ作ってるんでしょ。見てて呆れるわ』
『葉月君だってきっと、お情けで付き合ってあげてるだけでしょう。もう少し身の程わきまえろっつーの』
彼女達の言葉は悪意に満ちていて、聞いてて耳を塞ぎたくなる。
けど頭に直接流れてくる声と映像は、止める術がありません。
すると急に、彼女達の声が明るくなりました。
『これはお仕置きしておかなくちゃね。ほらこれ、水原さんの髪の毛。前にSNSで流れてきた呪いのやり方っての、試そうよ』
呪い!?
待ってください、何を考えているんですか。素人が呪いに手を出したら、どうなるかわかりませんよ!
だけど彼女達を、止めることはできません。
『たしかペットボトルの中に十円玉と髪の毛を入れて土に埋めるだけで、お手軽に呪えるんだっけ。面白そうだからやってみたいって、前から言ってたもんね』
『やろやろ。これで本当に怪我でもしたら、ウケるよね。はははは』
ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!
いっぺん痛い目見た方がいい。
不幸になっちゃえ。
悪意に満ちた、だけどどこか楽しそうな笑い声を、響かせる彼女達。
笑ながら人を呪う様を見て、ゾクゾクとした寒気を感じる。
だけど映像はそこまで。
ハッと我に返ると、私は元の廃ビルの廊下に、ぺたんと座り込んでいました。
「何でもありません。それより、急がないと彼を見失ってしまいます」
葉月君は、さっきのモヤには気づいていない様子。
もちろん彼も霊感はあるはずなのに気づかなかった。それほどに、小さな力しかなかったのです。
気になりますけど、今は後回しにしましょう。それよりも、ホームレスの霊を追わないと。
私達は逃げたホームレスの霊を追いかけて、廊下の隅まで追い詰める。
逃げ場を失った彼は、焦ったように声をあげます。
「や、やめろぉ、来るなー!」
「そういうわけにはいきません。大丈夫、怖くないですから、大人しくしててくださいね。迷う者、荒ぶる魂、鎮まりたまえ……浄!」
「うあぁぁぁぁっ⁉」
光に包まれたホームレスの霊はだんだんと消えていって、浄化完了。
とりあえず、依頼されていたお祓いはこれで終了……なんですけど。
「一丁上がりだね。って、トモ。怖い顔してどうしたの?」
「それが、さっきから妙な気配がしていて……っ、そこです!」
振り返った先、廊下の隅。
そにはさっきあったのと同じ、黒いモヤの塊があったのです。
相変わらず集中しなければ気づかないくらい力は弱いですけど、悪いものを感じます。
「なんだあれ? あんなのがいるって、よく気づいたね」
「実は、さっきも絡まれたのですよ。けど、本当に何なのでしょう?」
悪い気感じはしますけど、幽霊でも妖でもありません。まあ何にせよ、祓っておいた方がいいですね。
近づくと手をかざして、さっきと同じように浄化を始めます……が。
「迷う者、荒ぶる魂、鎮まり……えっ?」
モヤに触れた瞬間、突如頭の中に、何かの映像が浮かんできました。
な、何ですかこれは?
まるで情報を無理矢理、頭に叩き込まれたよう。
脳裏に映し出されたのは、うちの学校の制服を着た、三人の女子生徒の後ろ姿でした。
これは、誰かの記憶? 混乱していると、冷たい声が響きました。
『水原さんってさあ、なんか調子乗ってるよね』
え、私?
女子生徒の一人が放ったのは、まさかの私の名前。
すると、他の二人もそれに同意します。
『あの天然だって、どうせ作ってるんでしょ。見てて呆れるわ』
『葉月君だってきっと、お情けで付き合ってあげてるだけでしょう。もう少し身の程わきまえろっつーの』
彼女達の言葉は悪意に満ちていて、聞いてて耳を塞ぎたくなる。
けど頭に直接流れてくる声と映像は、止める術がありません。
すると急に、彼女達の声が明るくなりました。
『これはお仕置きしておかなくちゃね。ほらこれ、水原さんの髪の毛。前にSNSで流れてきた呪いのやり方っての、試そうよ』
呪い!?
待ってください、何を考えているんですか。素人が呪いに手を出したら、どうなるかわかりませんよ!
だけど彼女達を、止めることはできません。
『たしかペットボトルの中に十円玉と髪の毛を入れて土に埋めるだけで、お手軽に呪えるんだっけ。面白そうだからやってみたいって、前から言ってたもんね』
『やろやろ。これで本当に怪我でもしたら、ウケるよね。はははは』
ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!
いっぺん痛い目見た方がいい。
不幸になっちゃえ。
悪意に満ちた、だけどどこか楽しそうな笑い声を、響かせる彼女達。
笑ながら人を呪う様を見て、ゾクゾクとした寒気を感じる。
だけど映像はそこまで。
ハッと我に返ると、私は元の廃ビルの廊下に、ぺたんと座り込んでいました。