甘いお菓子のように

3

することもなくレジの前でぼーっとしてると彼女はレジから離れ、フェイスアップに行ってしまった。

やることがなく暇な時間があるとき、大抵の女子だったら話しかけてきてくれた。

だけど、彼女だけは俺から逃げるようにレジから離れた。

俺たちが一緒にいれるのは1時間しかないのに。

その間に、もっと彼女と関わりたいと思うのに、どうして逃げようとするのか。

これじゃぁ、話しかけたくても話しかけられないじゃないか。

それとも俺とは話したくないのだろうか。

そう思っていると突然、俺を呼ぶ声が聞こえた。

いつの間にか、レジの前に楠野がいて「え〜髪切ったんだね!」と言ってきた。

やっぱ気づいたんだと思った。

「そうだよ」

「へぇ、似合うじゃん」

「ありがとう」

楠野に言われるのは嬉しいけど、だけど俺はあの人に同じことを言ってもらいたかった。
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