甘いお菓子のように

4

「紅子さん、お疲れ様です」

「あ、お疲れ様」

みんなが紅子さんと呼ぶから、わたしも自然と紅子さんと呼ぶようになった。

「何飲んでるんですか?」

「赤ワインですよ」

「えー大人!!」

「いえいえ、ポリフェノールがあるので」

「ポリ?え?」

「ポリフェノールは抗酸化作用があって体に良いんですよ」

「あーそうなんですか!」

やっぱ知らない言葉を知ってるだけで大人っていう感じがする!

まぁ、紅子さんはわたしよりも随分大人なのだろうけど。

老けているわけでもなく、綺麗で品がある大人だから男性から好かれるのだなぁと思った。

「彼と仲良さげでしたね」

「彼?」

紅子さんは、高山くんに目配せしたので「あぁあ」とわたしは思った。

「まぁ、同じ新入社員ですから!割と話が盛り上がって今度食事に行こうって誘われました」

「それはすごいですね」と言って紅子さんはクスッと笑った。

「わ!笑った顔初めて見た!」と思わず見入ってしまった。

歯並びも整っていて、形のいい唇で上品に笑う姿はまさに女神だった。

「紅子さんってアニメに興味があるんですか?」

「え、なんで?」

「アニメ部門なので」

「たまたまプログラミングを独学で学んでるときにここの求人を見て応募したんです。アニメはあまり観ないですが、進撃の小人は好きですよ?」

「え、進撃の小人ってあの残虐なやつですか?恋愛ものとか観ないんですね。意外です」

そんな感じでやりとりをしているときにふと目の前を横切る二階堂さんが目に入った。

それを目で追ったのが紅子さんにバレたのか「彼、独身で彼女もいないみたいなので狙い目ですよ」と応援されてしまった。

「え、紅子さんは二階堂さんに興味ないんですか?」

「え、二階堂さんですか?彼は良い人ですけどタイプではないです」

「えーーーそうなんですか?ちなみに、どんな人がタイプなんですか?」

「えぇ、どうだろう。考えたことなかったので・・・」

「え、ってか、彼氏とか作らないんですか?」

「彼氏ですか?彼氏は・・・そうかんたんに作れるものじゃないでしょう」

そう紅子さんは苦笑いで答えたけど、あなたほどの美しい人だったらすぐにできそうだと思って言うのをやめた。

でも、好きな男性のタイプも分からなくて彼氏も作ろうとしない紅子さんをわたしは不思議に思った。

なので、わたしはつい失礼なことを聞いてしまった。

「紅子さんって、そもそも男に興味あるんですか?」

「え!?」

紅子さんは驚いた表情でわたしの方を見た。

だけど、すぐに目をそらすと「それは、あるでしょう」と何かをごまかすように自信なさげに答えた。

やはり、謎だと思った。

わたしは、勇気を出して「紅子さんって休日は何をされて・・・」と聞こうとしたら「中島さんってお菓子好き?」と突拍子もないことを聞かれて思わず「え!?」と反応してしまった。

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