エデンの彼方でいつかまた
決意
スマートフォンが着信で震えていて、その振動で瑞希は目を覚ました。

敬信からである。
見ると何十件も通知が入っており、すべて敬信からだった。

泣き腫らし、眠っていたらしい。

「はい、敬信さん」

スマートフォンを耳にあてる。
近所の公園にいるらしかった。

「わかりました。そちらへ行きますね」

瑞希は通話を切ると、久しぶりの自分のアパートを見渡した。
狭い部屋。
少ないが好きな物に囲まれている。

そんな腕には二十一年間、大事にしているブレスレット。

瑞希はしばらく、それを撫でていたが、やがて立ち上がりアパートから出て行った。

月が瑞希を照らしている。

月明かりの公園で敬信が立っていた。
彼一人しかいない秋の公園は、虫の鳴き声の合唱だけが響いている。

二人はベンチに並んで座る。
しばらくの沈黙のあと、切り出したのは瑞希だった。

「ずっと考えていました。わたしは名前も知らないあなたが好きでしたが、それは本当に恋人になりたかったからだったのかって。ただの憧れだったんじゃないか、って」

精神的に参っていた瑞希。
そこに現れた敬信は、ヒーローそのものだった。

「……答えはでたのか?」

敬信の問いに、瑞希は首を横に振る。

「わかりません。今こうしていても、敬信さんを男性として好きなのか、憧れのお兄さんのまま好きなのか……」

幼かったあの日の出来事を覚えていてくれた。
瑞希にはそれだけで、じゅうぶんだったのだ。

世界中の女性も男性もがデザイナー、ケイシンに羨望の眼差しを送っている。

本来なら接点もなく、知らない他人。

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