悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。




 温もりに反比例して冷静さを取り戻したファウラは、ユトが夜な夜なルイゼルトの我儘に振り回されたのだと悟り、心の中で彼に深々と頭を下げた。



(ユト……どうか無理だけはしないでね)



 動き出した馬車の中で窓の外を見れば、ぐったりとしたユトが半分魂が抜けた様子で見送っていた。

 残された彼にどうか災難が降りかからないように願いつつ、城を後にしたファウラ達は揺れる馬車に身を預けた。

 互いに朝食を摂って無かったこともあり、まずは王都の端にある小さな料理店へと立ち寄ることにした。国王と身分がバレてしまうのではないかというファウラの心配は、特に要らなかった。

 軽装で来たルイゼルトは、お忍び慣れしているのか王族のオーラを一切出さない。

 それどころかその場の空気にすぐに溶け込んでいく姿に、感心してしまう程だった。

 城で出される高級感のある朝食とは異なり質素ではあるものの、街の人達に愛される優しい味はファウラだけではなく、ルイゼルトの胃袋も掴んだらしい。無言で食べてはいるが、表情を見れば素直に美味しいと頬を緩ませていた。

 食事が終われば、そこからそう遠くない街へと辿り着き、王都に負けない程の人の多さにファウラは思わず息を零した。







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