悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。




 感じたこともない強い圧力に後ずさると、その距離を縮めてくるハヒェルは鎖を擦らせる音を響かせた。




「少し前から神のざわめきが頻繁に聞こえるようになりました。そしてあの日神々の大きなざわめきが聞こえた私は胸騒ぎを覚え、神殿を離れ城内を調べておりました。そこで私が目にしたのは、殿下が影を従えているのを目にしました」


「あれは……」




 自分でも説明の付けられない力の存在に、ファウラは言葉を濁らせる。

 それを肯定と判断したハヒェルは、すかさず距離を詰めてファウラを石柱に押し付けた。



「殿下は……人間が干渉することが不可能とされている悪の力をお持ちだ。その力を持って、陛下に何をしようと企んでおいでか」


「違うんです!私はあの影から陛下をお守りしようと――!」


「戯言を聞きたくて問い詰めているように見えますか」




 石柱に強い力で押しつけられ、じわりと痛みが滲む。

 痛みに顔を顰めると、ハヒェルは刻まれた顔のしわにより深いしわを眉間に刻んだ。









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