悪魔な国王陛下は、ワケあり姫をご所望です。





「陛下にとって今回の婚姻は、レゼルト王国とクラネリシア国の同盟を証立させるものであって、相手が誰であろうと、両国の王族が婚姻を結んだという事実さえあればいいと思ってるのかもしれない。でも私は、陛下と夫婦になるなら、陛下の事をもっと知りたい」



 ルイゼルトが今回の婚姻をどのように思っているのかは、分からない。

 だが、ファウラには曲げられない思いがある。幸せになると約束したのだから、ルイゼルトのことを好きになりたいのだ。初めての恋をする相手は、夫になる彼以外いないのだから。




「本当にそれでいいのか」


「どうして?」


「先程お前が言った通り、今回の婚姻は国策でしかない。その役目を果たすだけでいいんだ。心まで縛りつけることはできないんだから、形だけの夫婦になっても誰も咎めないだろ」


「形だけの夫婦なんて困るわ。私、幸せになるって皆に約束してここに来たのよ。新しい道を歩もうとしてるのに、自分からそれを拒絶してたら、幸せになんてなれるわけないもの。私は陛下をもっと知りたい。知って、もっと陛下を好きになりたい。私と幸せになる道を、一緒に歩んでほしい」




 ファウラの想いは、静かな夜に溶け込むように消えていく。それでも、触れた手を強く握り締めて、強く願う。



(陛下のことを知りたい。この国のことも、知らない世界のことも知りたい。空が見えない鳥籠の中にいるなんて、もう嫌だから)



 自由に羽を広げて飛び立てるのは、きっとこの国のルイゼルトの隣なんだとそう信じて。




「はあ……本当、変わった女が来たもんだ」

 
「もっもしかして、こんな女は陛下からお断りだったり?!それだったら、私一人で陛下に恋をするわ。まだ、初恋もまだだから、どうしていいか分からない……けど」




 改めて自分が恋の仕方を知らないというのに、大口叩くように幸せにしてほしいとあの悪魔王に言ってしまったのだ。







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