それは手から始まる恋でした
「港に話してすっきりした。やっぱり港は私のオアシスだよ。一生友達でいてね」
「それはよかった。いつでもオアシスにおいで」

 港は優しい。こうやっていつでも私を受け入れてくれる。こんな友達がいて私は幸せだ。
 港に心を癒してもらった私はこの状況を楽しむことに決めた。向こうが遊んでいるというのなら私も遊んでやろうではないか。こんなことでもないとできるはずのない彼氏を、彼氏もどきを堪能しよう。

 月曜日に出社すると高良はまだ出社していなかった。念のために机の上を確認したがメモは残っていなかった。私は仕事を始めたがここで繰り広げられたドラマのような出来事を思い出して集中できずにいた。

「波野さぁん。風邪ですかぁ?」

 この可愛らしいねっとりした喋り方は、海外営業部の姫、鮫島(さめじま)こまり。彼女は若手社員だが、会社で知らない人はいないと言われるほど可愛くアイドルのような存在だ。そんな彼女は購買部に配属されていたが、女性が多い職場は嫌だと自ら海外営業部の部長にお願いし、この部署に移動してきたらしい。理由が理由なだけに女性社員からの人気は地の底だ。

「いえ。熱はないです。少し熱くなってきたかなって」
「確かにぃ。波野さんの席って日当たりいいですもんねぇ。私寒がりなんでぇ、席替わりましょうかぁ?」
「優しいですね」
「席だけじゃなくて仕事も交換してもらいたいですぅ。私ぃ高良さんの補佐やりますって言ってたのに採用試験始めちゃうしぃ、波野さん来ちゃうしぃ、もう本当、計画狂っちゃったぁ」
「計画?」
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