それは手から始まる恋でした
仁と港の直接対決?
 クリスマスが明けると次はお正月。高良は海外旅行に行こうと言い出したが、私はパスポートすら持っていない。さすがの高良でもパスポートはどうすることもできなかった。

 高良は国内旅行も提案してくれたが、両親には実家に帰る事を言っていたこともあり私は仕事納めした翌日に一人で実家に帰った。

 高良に一緒に実家に行くと言われたが、そこは丁重にお断りした。大きな騒ぎになること間違いなしだからだ。魔の姉夫婦が正月にお年玉目当てに来て数日過ごす。彼らに目をつけられたら終わりだ。

 正月早々、姉夫婦はいつものように実家に来た。私が甥っ子にお年玉をあげると夫婦揃っていつものようにプレッシャーを与えてくる。

 そろそろ結婚しないのか、彼氏はいないのか、東京なんかにいるから乗り遅れるんだ、もう後がないなど遠慮がない。

 甥っ子に会えるのは嬉しいが既に小学生。私とは遊んでくれず、話かけてくれたと思ったらあれが欲しいこれが欲しいと言ってくる。まるで私を財布としか見ていない。どんな育て方をしたらこうなるのだろうか。

 あまり居心地もよくないので正月早々帰ることにした。高良からも早く会いたいと何度も連絡が来ている。私を待ってくれている人がいるというのは幸せなことだ。

「ごめん。私帰るね。仕事残したまま帰って来たからそろそろやっておかないと」
「お正月に仕事なんて酷い会社ね。大手だから仕方ないのかもしれないけど」
「だから私が悪いんだって。会社はいい人ばかりだよ」
「そんなこと言って私達が来たからでしょう。毎年すぐ帰るんだから。そろそろ港君にでもお嫁にしてって言ってみなさいよ」
「お姉ちゃん、そんなこと言わないの。港君もあの美貌よ。紬を相手にするわけないでしょ」

 母の言葉はどこか棘がある。実は会社の社長息子と一緒に住んでいますなんて言ったら大騒ぎになるだろう。

 私は残念がる両親を置いて新幹線に乗った。正月を家族以外と過ごすのも悪くない。たまに港と正月旅行をしていたがそれとは違う。

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