【最恐×辛口ホームドラマ】崩口川(くえくちがわ)
第5話
4月18日のことであった。

場所は、ギンゾウ夫婦の家の広間にて…

広間には、ギンゾウ夫婦と菜水と穂香と梶谷の家の家族たち7人が集まっていた。

麗斗は、職場の人たちと一緒に遠方へ出かけたので家にいなかった。

太郎は、ギンゾウ夫婦に頼まれて買い出しに行ってた。

この日は、温大夫婦がギンゾウ夫婦に玲のお見合いのお世話を頼むことをかねてランチを摂る予定である。

太郎は、ギンゾウ夫婦に頼まれて菊間町のうなぎ屋さん(ギンゾウの旧友が経営している店)へ買い出しに行ってた。

太郎が家を出たのは朝9時過ぎだった。

帰宅予定時刻は12時前と見込んでいたが、太郎はまだ帰っていなかった。

太郎は、今ごろどの辺りにいるのか…

帰り道が分からなくなったのか?

ギンゾウ夫婦は、ひどくソワソワしていた。

時計のはりは、12時50分になった。

この時、あつこがあつかましい声で龍磨とあつみに言うた。

「帰るわよ!!」

あつみは、つらそうな声であつこに言うた。

「えー、なんで帰るのぉ~」

あつこは、あつかましい声で言い返した。

「お勉強の時間だから帰るのです!!」
「お勉強~」
「あつみ!!どうしてきのうのうちに宿題をしなかったのよ!!今日中にたまっている宿題を片付けなさい!!宿題が終わったら、受験勉強をするのよ!!」

端で聞いていたともえは、あつこを止めた。

「ちょっと待ってよぉ~」
「なんなのですか!?」
「受験勉強って、言うたわねぇ。」
「ええ、そうよ!!龍磨は、一般入試で県立高校を受験する…あつみはアイコーから超一流の女子大を目指すとヤクソクさせました!!」
「それだったら、ごはんを食べてからにしたら?」
「いいえ、時間だから帰ります!!」
「だけど、お腹すいていたら勉強に集中できないのよ…今、長男がうなぎを持って帰るから…」
「いいえ、帰ります!!」
「ちょっと待ってよぉ~、子どもたちはお腹すかせているのよ!!」
「いいえ、帰ります!!龍磨とあつみが合格するためには、食べる時間も寝る時間もなしで必死になって勉強しないとダメなのよ!!父親みたいになりたくないのであれば、必死になって勉強しないとダメなのよ!!」

(バーン!!)

「オドレあつこ!!」

(ブチ!!)

「いたーい!!」

あつこが言うた言葉にブチ切れた温彦が、あつこの髪の毛を右手でつかんで思い切りちぎった。

「よくも子どもたちの前でオレの悪口を言うたな!!」
「なにするのよ!!」
「ふざけるな!!」
「いたーい!!」

怒り狂った温彦は、あつこを外へ引っぱりだした。

あつこは、温彦からきつい暴行を受け続けた。

ともえは、温大夫婦を怒鳴りつけた。

「ちょっとあんたたち!!」

温大は、ぼんやりとした表情で言うた。

「なんでしょうか?」
「『なんでしょうか?』…じゃないでしょ!!あれは一体どう言うことですか!?」
「どう言うことって?」
「娘さんのお見合いのお世話をお願いする席で息子さんがお嫁さんに暴力をふるうなんて最低ね!!なんで止めないのよ!?」

優子は、弱々しい声でともえに言うた。

「奥さま、悪いのはうちら夫婦なのです…うちらが龍磨とあつみを甘やかしたことが原因なのです…龍磨を特別支援学校へ行かせたのがいけないのです。」
「あんたたち!!このままでは家族たちが仲よく暮らせなくなるわよ!!」

ともえは、温大夫婦を思い切り怒鳴りつけた。

この時であった。

菜水のエプロンのポケットに入っているギャラクシー(スマホ)にライン通話の着信音が鳴った。

菜水は、電話に出た。

電話は、太郎からであった。

電話に出た菜水は、太郎を怒鳴りつけた。

「あなた!!早くしてよ!!みんながお腹すかせて待っているのよ!!今、どの辺りにいるのよ!?」

ところ変わって、菊間町種の国道196号線にて…

太郎が運転している車は、ここで足止めされた。

うなぎ屋を出発する15分前に、足止めされた場所から今治方面へ1キロ先にあるホンダカーズの店舗の前でダンプカーが積み荷の砂をあやまって道路にかやしたトラブルが発生した。

積み荷をかやしたダンプカーは、そのまま松山方面へ逃走した。

道路は、大量の海砂を撤去する作業のために通行止めになった。

迂回路は、旧道(JR伊予亀岡駅の付近の通り・最高速度は30キロである)である。

道幅が狭いので警察官による手信号で交通整理をしていたので、通り抜けに時間がかかるようだ。

車を運転している太郎は、受話器ごしにいる菜水に怒鳴り声をあげた。

「オレだって早く帰りたいよ!!だけど、ダンプが砂かやして(ひっくり返して)逃げた事件が発生したので通行止めになった…迂回路はあるけど、警察官による交通整理で通り抜けるまで時間がかかるんだよ!!…だから、うなぎを持って帰るまでガマンせえ!!」

太郎に怒鳴られた菜水は、怒鳴り返した。

「待てるわけないわよ!!あなた、今何時だと思っているのよ!!」
「ガマンせえ言うたらガマンせえ!!」
「ガマンできん!!」
「菜水さん、変わって…」

菜水からスマホを受け取ったともえは、太郎にもうしわけない声で言うた。

「もしもし太郎、ごめんね…もういいわよ…梶谷さんの家の人たちにまた今度にしてもらうようにお願いしとくから…」

(ガチャーン!!)

ブチ切れた太郎は、電話をガチャーンと切った。

ともえは、ものすごく困った表情を浮かべた。

温大夫婦は、日を改めてギンゾウ夫婦にお願いすると言うたあと、家族を連れて帰宅した。

時は、夕方4時過ぎであった。

ダンプカーが積み荷をかやしたトラブルによる通行止めが解除されたので、国道は通常通り通れるようになった。

しかし、太郎は帰宅しなかった。

積み荷をかやしたダンプカーは、ヤグザ組織が経営している運送会社の所有物であったことを聞いた太郎は『仕返ししてやる!!』と激怒していた。

場所は、菊間町佐方の山道(越智西部広域農道)にて…

故意に積み荷をかやしたダンプカーが現場付近を走行した。

ダンプカーが通過したあと、太郎が運転している車が飛び出した。

太郎が運転している車がダンプカーに追いついた。

その後、太郎はダンプカーの前に飛び出た。

太郎が運転している車は、ダンプカーの前でジグザグ走行をしていた。

ダンプカーには、20代の男性と派手な格好の女が乗っている。

それから30分後…

大西町山之内の山之内川にかかる橋の付近にて…

(キキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキキ!!)

「ワアーッ!!」
「ギャー!!」

(ドスーン!!ドスンドスンドスンドスンドスンドスンドスン!!)

ダンプカーは、道を外れたあとがけ下へ激しくすべり落ちた。

そして…

(バッ!!ドカーン!!)

し烈な閃光が3秒きらめいたあと、大規模爆発を起こした。

トラブルを起こしたダンプカーは、こっぱみじんに大破した。

しかし、太郎の怒りはまだおさまっていなかった。

時は、夜7時過ぎであった。

場所は、今治城の南寄りの地区の道路にて…

(キーッ!!ドスーン!!ガシャーン!!グオオオーン!!)

一時停止の交差点でひき逃げ事件が発生した。

自転車に乗っていた母子が太郎が運転している車にはねられた…

太郎が運転している車は、そのまま逃走した。

夜8時55分頃、太郎が運転している車は朝倉ダムの上の地区(西条市黒谷(くろのたに))の林道に到着した。

そこで車はガス欠を起こして止めた。

太郎は、貴重品と車の車検証などの必要な書類などを持ち出して逃走した。

日付が変わって、4月19日の深夜1時半過ぎであった。

ところ変わって、ギンゾウ夫婦の家の広間にて…

広間には、ギンゾウ夫婦と菜水がいた。

テレビのニュースで大西町の農道で乗用車にあおり運転された特大ダンプががけ下へ転落して大破した事件と今治市内で自転車に乗っていた母子がひき逃げに遭って亡くなった事件が報じられた。

ニュースを聞いたギンゾウ夫婦と菜水は、非常に強い不安にさいなまされた。

事件の直後に、ギンゾウの知人(うなぎ屋の主人)からヒンパンに電話がかかっていた。

『太郎さんは、まだ帰宅していないのか?』
『太郎さんが行きそうな場所はどこ?』

…などと、たずねていた。

ギンゾウ夫婦は、対応にクリョしていた。

深夜3時過ぎであった。

太郎がものすごい血相で帰宅した。

玄関に行った菜水は、太郎を怒鳴りつけた。

「あなた!!こんな時間までどこへ行ってたのよ!!うなぎ屋のご主人が心配になって電話をかけてきたのよ!!」
「そんなのあとにせえ!!」
「あなた!!」

太郎は『どえらいことをしてもうた~』と言いながら広間にあがった。

ものすごい血相で広間にあがった太郎を見たギンゾウ夫婦は、おたついた声で言うた。

「太郎!!一体どうしたのだ!?」
「太郎、ねえ太郎!!」

太郎は、つらそうな声でギンゾウ夫婦に言うた。

「どえらいことをしてもうた~…オレ…国道で積み荷をかやして逃げたダンプカーに…あおり…」

ともえは、つらそうな声で太郎に呼びかけた。

「あおり…なんで危ないことをしたのよ!?」

太郎は、ひどくコーフンした声でともえに言うた。

「ダンプカーの運転手がちょっかい出してきた!!…オレは…やむなく仕返しした!!…ダンプカーはヤグザ組織が経営している運送会社だぞ…オレは許せないから、仕返しした!!…運転手の男は…組長の跡取り息子や…ひき逃げ事件で亡くなった母子は…跡取り息子の妻子や…」

このあと、太郎は嗤い(わらい)声をあげた。

ともえは、泣き叫ぶ声で太郎に言うた。

「なんてことしたのよ!!太郎はどこのどこまで自分勝手なのよ!?暴力団関係者に焚きつけて行ったら、どうなるのか分かっているの!?」

太郎は、ナマイキな態度でともえに言い返した。

「そんなん、向こうが悪いねん…向こうがオレにケンカしかけたんや!!だから仕返しした!!悪いかよ…ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ…」
「太郎!!」

ともえの横にいたギンゾウがともえに『やめろ!!』と弱々しい声で言うた。

「もうやめろ…話はよくわかった…夜が明けたら、ワシが知人に電話する…」
「あなた!!」
「ワシが太郎の身代わりになる…もういい…きょうのところは寝よう…」

このあと、一家は就寝した。

そして、夜が明けた。

ギンゾウは、元格闘家の知人に電話して太郎が起こしたヤグザのもめ事の解決をお願いした。

ギンゾウの知人は、知人の知人のそのまた知人を通じて、新居浜のヤグザ組織の組長に今回のジダン交渉をお願いした。

ジダン交渉は、2日で成立した。

トラブルは解決したが、太郎は車に乗りたくないと言うたので、廃車にする手続きなどで時間を費やした。

すべての問題が解決したのは、5月20日頃であった。
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