砂浜に描いたうたかたの夢
第1章

疲弊した夏

『もうすぐ始まる夏休み。海水浴に出かける人々も増加するであろう今回は、海に潜む危険について──』



午後9時過ぎ。テレビに釘づけになっている母の目を盗んで、キッチンに忍び込む。

おっ、まだ残ってた。


冷凍庫からバニラ味の棒アイスを取り、そっと封を開けて口に運ぶ。

ん〜! 美味しい! 冷房が効いた部屋で食べるアイスは最高だ!



「ただいまー」



そのままボーッとテレビを観ていると、父が帰ってきた。

リビングに入るやいなや、真っ黒なジャケットを脱いでエアコンの前へ。



「おかえり。ご飯どうする? 一応、魚は焼いてるけど」

「あー、なら魚だけ。残りは明日の朝に食べる」



テレビ画面がCMに切り替わり、立ち上がった母。その声に父が首だけを動かして返事をした。

帰宅してすぐ、パパッとご飯食べて出ていったからな。


アイスを口に詰め込み、何事もなかったかのようにしれっと棒をゴミ箱に捨てた。

小さかったからあっという間に終わっちゃった。もう1本食べようっと。
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