砂浜に描いたうたかたの夢
「ねぇ、ひいおばあちゃんいるって言ってたよね? いくつなの?」

「98。今年で99なんだって」



階段を登りながら答えた。

若くして母親になった曾祖母。今何歳なのか気になって祖父に尋ねたら、なんと100歳間近だった。



「お元気だね。俺のところにもひいじいちゃんがいてさ、92歳なんだよ。お祝いはするの?」

「ううん。もうしたからしないんだって」



その瞬間、真っ先に百寿が思い浮かんで。
『お祝いしようよ!』と提案したんだけど、今年の頭に祝っちゃってたらしい。

高齢者が多い現代でも、百寿を迎える人はそうそういない。
せっかくみんな集まってるし、祝ってあげたいな。



「92なら、近いのは卒寿祝いだっけ。凪くんはお祝いした?」

「ええー、どうだったっけ……」



参考にしたくて、他所の家のお祝い事情を尋ねたら、頭を捻り始めた。

眉間に深いシワが寄った険しい顔。

遥か昔の話じゃないのに、そこまで顔しかめる?



「多分贈り物はしたと思うんだけど……」

「曖昧だなぁ。覚えてないの?」

「祝い事とかは大体親がやってたから。そもそも、ひいじいちゃんとは長い間会ってなかったから、あまり記憶にないんだよ。年齢も、こっちに来るまでは知らなかったし」
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