【辛口ホームドラマ】かもいけ海岸
第6話
それからまた時は流れて…

7月23日頃であった。

この日の予想最高気温は39度で、もっとも暑い日であった。

愛也がいる私立高校の寮は、夏休みに入ったので生徒たちは各地へ帰省した。

しかし、愛也は寮のキヤクに反して勝手し放題したことと極度の成績不振を理由に夏休み中は居残り補習で帰省厳禁…

なので、家に帰ることはできない。

ネボウ・チコク・ハヤベン・エスケープ…

悪いことばかり繰りかえす愛也に、夏休み・冬休み・春休みなんかない。

週番が回ってきても他の生徒にやらすなど、ナマクラになった。

『夜7時の勉強時間なんかイヤだ!!』
『寮のメシは、ノラ犬のエサ同然だ!!』
『(通学生)くんの家のお弁当がおいしいおいしい…』
『先輩がプレステをひとり占めしているからゲームができん!!』
『(通学生)くんの親が『遊びに来てもいいよ。』と言うたから遊びに行った…(通学生)くんの家が居心地がいい。』
『寮は汚いからいたくねえんだよボケ!!』

そのようなわがままばかりをこねている愛也は、寮に居場所をなくした。

だから、通学生の生徒の家へ遊びに行く。

そして、そのまま泊まり込む。

寮長先生は、愛也を指導せずに過度に甘やかしまくる…

だから、愛也はつけ上がった。

自由と権利ばかりをひたすら主張し続ける愛也は、社会に順応しない大人になることは明確だ。

その頃、かもいけの家は最大級の危機におちいった。

2ヶ月前にさじを投げた鹿之助夫婦は、ひなこのお相手探しをすると言うて急に居直った。

『37歳のひなこにふさわしいお相手なんかいるものか…』

…と言うてさじを投げてヤーメタと言うた鹿之助夫婦は、急に事情が変わったからお相手探しをすると居直った。

ユウジュウフダンな性格が原因で、周囲にメイワクが及んだことなんかおかまいなしの鹿之助夫婦は、どこのどこまでふざけているのか?

場所は、家の広間にて…

時は、朝9時過ぎであった。

この時、智之は家に不在であった。

出かける支度を終えた鹿之助夫婦は、ものすごくイラついた様子で時計を見つめた。

ひなこは、なにをしているのだ…

『きょうは、おとーさんとおかーさんと一緒に愛結びに行くのよ。』と言うたのに…

なにをグズグズしよんかしら…

その時であった。

(ジリリリリリリン!!ジリリリリリリン!!)

この時、黒のダイヤル式の電話機のベルがけたたましく鳴り響いた。

パジャマ姿のまりえが電話に出た。

「もちもち、フナイリです…どちらさまでちゅか?…大沢食品?…大沢食品がなんのようでちゅか?」

そこへ、トイレから戻ったゆりかが血相を変えてやって来た。

「まりえ!!」

まりえから受話器を取り上げたゆりかは、怒り気味の声で言うた。

「もしもし変わりました…大沢食品がうちになんのようでかけてきたのですか…分かりました…本人をうちに呼びます…ええ、聞いてみます…ゴメイワクをおかけしてすみませんでした…はい、あやまりました!!」

(ガチャーン!!)

ゆりかは、両手で頭を激しくかきむしりながらイラついた。

その後、ゆりかは端にいたまりえに命令した。

「まりえ!!バツとして温史を呼んできなさい!!」
「えっ?バツ?」
「電話でおかしいこと言うたからバツとして温史を呼んできなさいと言うたのよ!!早く呼んできなさい!!」

ゆりかに命令されたまりえは、借家へ向かった。

しかし、戸締まりされていたので温史を呼び出すことができなかった。

温史は、6月に入ったあたりから勤務態度が悪くなった。

チコク・ソータイ・勝手に休む…

さらにその上に、職場の人たちからカネをたかる…

そのまた上に、人が注文したお弁当まで食べる…

職場のひとは『温史は役立たずだ!!』と言うて怒り狂っていた。

職場の従業員さんたちも『温史をやっつけてやる!!』と言うて激怒している。

職場では、従業員さんたちが経営者に対して『温史が追放されるまで徹底抗戦をかまえる!!』と言うてストライキを構えた。

ストライキを構えるレベルに達したと言うことは、温史は職場に居場所をなくしたと言うことである。

ストライキは、6月中旬からずっとつづいている。

その間、コキャクとの取引が停滞した。

…と言うことは、経済損失が大きくなった…

…と言うことだ。

この時、鹿之助夫婦は温史としほこをリコンさせることを決めた。

しほこさんと温史を結婚させたことは間違いだった…

そうぼやいた鹿之助夫婦は、松山で暮らしているしほこの兄夫婦の家へ電話して、しほこを迎えにきてほしいと頼んだ。

時は、昼前のことであった。

ところ変わって、しほこがパートで働いている運送会社にて…

デスクワークをしているしほこに、会社の人が切迫詰まった声で言うた。

「しほこさん、おうちの人がすぐに帰りなさいと言うてたよ!!」
「(困った表情で)ええ、困るわよ!!いくらなんでも困ります!!」
「とにかく、すぐに帰りなさい!!おじさん夫婦が『事情が変わった…』と言うていたのだよ!!」

会社のひとから言われたしほこは、帰り支度を始めた。

ところ変わって、智之夫婦の家の広間にて…

しほこが帰宅したのは、午後12時半だったと思う。

その時、重秀夫婦が広間で鹿之助夫婦と話し合いをしていた。

しほこは、帰宅してすぐに借家に行った。

この時、温史は家に不在であった。

しほこは、温史がいないうちに自分の着替えなどの身の回り品と貴重品を全部取り出した。

午後2時過ぎのことであった。

あとかたづけを終えたしほこは、家の広間にいる鹿之助夫婦と重秀夫婦と一緒に今後のことについて話し合った。

鹿之助夫婦は、その時に離婚届をしほこに差し出した。

急に離婚届を出されたしほこは、コンワクした。

なんで急にリコンしてくれと言うのよ…

しほこは、ものすごくつらそうな表情を浮かべながらつぶやいた。

鹿之助は、もうしわけない表情でしほこに言うた。

「しほこさん、急なことでもうしわけないけど、リコン届にサインしてくれる?」
「えっ、リコン届にサインしてって…どうして急に…」

きぬよは、もうしわけない表情でしほこに言うた。

「しほこさん、急なお願いを言うてごめんね…」

しほこは、きぬよにどうしてリコン届にサインをするのかとたずねた。

「どうして…どうしてリコン届にサインをしないといかんのよ…」

きぬよは、口ごもった声でしほこに言うた。

「どうしてって…おじさんとおばさんの都合が悪くなったのよ…」

しほこは、おたついた声でなっとくが行かないと言うた。

「それではなっとくが行きません!!きちんと説明してください!!」

きぬよは、口ごもった声でしほこに言うた。

「だから、くわしいことは時期がきたら話すから…」
「それじゃ、いつになったら話すのですか!?」
「だから、家の状況が落ち着いたら話すから…それまでは、松山のお兄さん夫婦のところにいてほしいの…」

きぬよは、家の事情が落ち着いたら話すとしほこに言うたあと大きくため息ついた。

勝手すぎるわよ…

おじさんとおばさんは、勝手すぎるわよ…

アタシと温史さんを結婚させておいて、事情が変わったからリコンせえなんて…

なっとく行かない…

鹿之助は、ものすごくつらそうな表情でしほこに言うた。

「しほこさん…すまないことをした…あやまる…あやまるよ…この通り…」

鹿之助は、しほこの前で深々と頭を下げた。

しほこは、つらそうな表情で鹿之助に言うた。

「許しません!!アタシの心はズタズタに傷ついたのよ!!どうしてくれるのよ!?」

しほこのそばにいるさとみは、やさしい声で言うた。

「しほこさん。」
「義姉(ねえ)さん…」
「うちらもあやまるよ。」
「なんで義姉さんまであやまるのよ?」
「しほこさんは、ほんとうは好きな人と結婚したのね。」

さとみの呼びかけに対して、しほこはつらそうな表情で首をたてに振った。

「それをぶち壊されたことがイヤだったのね…ごめんね…」

さとみの呼びかけに対して、しほこはつらそうな表情で首を横に振った。

「しほこさんの結婚に待ったをかけたのは、イジワルでかけたのじゃないのよ…お兄さんの都合があったから…」

それを聞いた重秀は、あつかましい声でブツブツと言うた。

「ふざけとんかオドレは…もとはと言うとオドレのワガママが原因なんだよ…オドレのワガママが原因でしほこと好きな人が別れたんだ…オドレさとみ!!」

急に声を荒げた重秀は、テーブルを平手打ちでたたいた。

「あなた、なんで急に声を荒げるのよ!?」
「やかましい!!だまれ!!」

向かいに座っているきぬよは、重秀にどうして急に声を荒げたのかと言うた。

「ちょっとお兄さま…」
「なんぞぉ!!」
「そんなに声を荒げたらしほこさんがびっくりするわよ。」

鹿之助は、つらそうな表情で重秀に言うた。

「今後のことについては、奥さまとしほこさんの3人で話し合いをしたらどうかな?」

さとみは、つらそうな表情で鹿之助夫婦に言うた。

「今からしほこさんを連れて帰ります…短い間でしたが、お世話になりました。」

それから30分後に、しほこは重秀夫婦と一緒に車に乗り込んだ。

しほこが乗り込んだ白のイプサム(ミニバン)は、鹿之助夫婦の家から出発した。

鹿之助夫婦は、手をふってしほこを見送った。

車は、県道大西波止浜港線から国道196号線を通って西条市方面へ向かった。

その後、今治小松自動車道~松山自動車道を通って松山市へ向かった。

しほこが重秀夫婦の家に到着したのは、夜遅くだったと思う。
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