憑かれた僕が彼女を助けるまでの備忘録
 僕がいるこの世界において、三島彩羽は"まだ"生きている。じゃあ、幽霊の彩羽は?

 鈍痛のする額を手でおさえて、僕は幾つかの違和感を引っ張り出した。

 警察が載せている事件や事故の情報をひらいたとき、彩羽に関する事故情報は見当たらなかった。事故現場に花を供えた様子も皆無だ。

 だとしたら、なんなのか?

 彩羽の霊魂はどこか別の次元から飛んできたのではないか?

 別の次元、と考え、例えば未来からと答える。

彼女が命を落とした日時を考慮して、まだ来ぬ日付だったとしたら、当然、事故情報には載っていない。

それに出会ったときの彩羽がそれらしいことを言っていた。

『幽霊になってまもない』ことと、『瞬間的にワープしたみたいな感覚』で引き寄せられたことを。あの降霊術の影響で、霊魂の彩羽は過去に飛んだのかもしれない。

「ありえない」

 乾いたつぶやきをもらし、僕はそっと目を閉じた。

 五日の日曜日。僕は寝る前に考えていたことを彩羽に伝えた。

 なかなかにありえない憶測だが、今僕にできることは現時点で生きている彩羽を死なせないことだ。それが霊魂の行方を見極める近道だと思った。

 スマホの中で彩羽は驚き、その目に少しの輝きを見せた。躊躇なく頷く彼女を見て、次に取るべき行動が決まった。
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