憑かれた僕が彼女を助けるまでの備忘録
 スマホのなかの彼女はきょとんとした表情で目を瞬いた。『まさか』と文字を並べる。

『質問の答えなんて全部てきとうだよ』

「てきとう?」

『でたらめ、ってこと。あんなこと聞かれても、分かるわけないじゃん』

「マジかよ……」

 悪びれる様子もなく、ふんぞりかえっている彩羽を見て、ため息と同時に笑みまでもらしてしまう。白いもやがふわっと浮かんで冬の冷気に流された。

 電車の騒音や、車道を走る車の走行音に邪魔をされ、ターゲットの足音は聞こえなかった。

『エイト、来たよ』

 スマホに浮かんだ文字を見て、僕は周囲に目を向けた。女子高生の姿をしたイロハが伏し目がちに歩いていた。手にはスマホを持ち、そこからイヤホンのコードが伸びていて耳をふさいでいる。意識は完全にスマホに向いていた。

 よりによって、あるきスマホ! 音楽まで聴いてるし!

 交通ルールを無視したイロハは、走ってくる車の群れを見て、一度立ち止まった。僕から見て斜め前に立っている。

「あの、すみません」
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