憑かれた僕が彼女を助けるまでの備忘録
『ごめん、怖がらせるつもりはなかったんだけど。帰宅中も入浴のときもまったく気づいてもらえなかったから』

 文字とともに、先ほど左肩に見えた女の顔が画面の下半分にすぅっと現れた。

 耳下数センチできりそろえた黒髪で、前髪はアーチを描いている。丸い黒目が印象的な小顔の女の子だ。よく見ると可愛い。

『私の話を聞いてくれる?』

 再び液晶画面に文字が綴られる。

 どうしよう、スマホが幽霊に乗っ取られてしまった……。

 心配すべき点はそこではないのだが、非現実的な現象に頭が追いつかない。

感覚としてはギャルゲーをやっているみたいだ。ギャルゲー、いわゆる男性向けの恋愛シミュレーションゲームのことだ。

 僕はスマホを見つめたまま、いつの間にか正座していた。小刻みに、うんうんと頷き、幽霊の言葉を待った。

『まずは自己紹介から。私の名前は三島(みしま)彩羽(いろは)。十八歳のJK。きみは?』

「ええと。渡辺(わたなべ)瑛斗(えいと)、十三歳」

『十三、ってことは中一?』

「いや、二年だけど」

『ふうん、じゃあ今が一番楽しい年代だ。勉強そこそこで恋もできて遊べて……毎日が楽しいでしょう?』

「……はぁ、そうっすね」
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