黒幌に呑み込まれる
神楽は、真幌をジッと見つめた。

正確には、目をそらせなかった。
真幌の恐ろしさに、そらすなんてできなかった。


「神楽」
「はい…」

「お、い、で?」

神楽の身体が、ゆっくり動き出した。
立ち上がると、真幌の方へ歩き出す。

そして真幌の胸の中に収まった。

恐ろしいと思っている。
身体は、ガクガク震えている。

なのに真幌の目に洗脳されたように、神楽は拒否できなくなっていた。



「怖い思いさせてごめんね。
このまま俺の家に行こうね。
先に車に行って待ってて。
俺は、急いで用を済ませるから」

「うん…
……………ん?用?」
神楽の頬を包み込み言った真幌に頷いた、神楽。
しかしすぐに、思い直した。

(用って……さっきの男の人、ぼろぼろだった。
どう考えても“あれ”をやったの、真幌だよね…?)

「ま、待って!」
「ん?」
「ま、真幌も一緒に行こ?」

「うん。でも、先に行ってて」

「だ、ダメだよ!
さっきの人、ぼろぼろだった……!
救急車呼ばないと!」

「うーん…
それ、嫌だな」

「え……」

「神楽が俺以外の奴を心配するのなんて、聞きたくない!
それにこいつ、俺の仲間のシマを荒らしたゴミなの。
ゴミは処分しないと!」
そう言った真幌は、男性の方へ行き蹴りあげた。

「え!!?ちょっ…真幌!やめて!!
お願い!!」
慌てて真幌を止めようとする、神楽。

「理苑!!」
「はい!
…………神楽さん、車にお送りします」
神楽の腰を抱き、車に促す。

「え…でも……」
「………」
「真幌を止めてください!!」

「………ちょっと、我慢してくださいね!」
「え………っ…うっ!!」
理苑が神楽の腹を殴り、神楽を気絶させた。

そして神楽を抱き上げ、車に連れていったのだった。


神楽が目を覚ますと、真幌の家のベッドに寝かせていた。
「んん…」

ゆっくり起き上がる。
腹に鈍い痛みがあり、擦りながらベッドを下りた。

ベッドルームを出ると、ちょうど真幌が向かい側から向かってきた。

「あ、神楽!起きた?」
「真幌…」

「大丈夫?お腹痛くない?」
神楽の頭を撫で言った。

「少し…」
「そう…ごめんね。
理苑、力が強すぎだよね。
後から、しばいとくからね!」

「あ、いや、だ、大丈夫だよ!
……………それより、真幌…」

「ん?」
「さっきの真幌、残りの半分の真幌?」

神楽の問いに、真幌は少し微笑んで言った。
「ベッド行こ?
そこで話す」
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