熱く甘く溶かして

 肩を落として頭を抱え込む恭介の様子を見て、智絵里は嗚咽を堪える。もうこれでおしまい。

「ねっ? 幻滅したでしょ?」
「……するわけないだろ、バカヤローが……」
「えっ……」
「ふざけんなよ。お前は被害者だぞ? しかも杉山がやったことは犯罪なんだよ! なんでその時にちゃんと言わないんだよ!」
「恭介……」
「……俺、なんであの時の智絵里の様子に気づけなかったんだろう……そうしたらお前がこんなに……何年も苦しむことはなかったんじゃないか……?」

 あの時の俺がもっと大人だったら、今の俺だったら……。

「……どちらにしても、恭介が見たのは走って逃げ出した私でしょ? もう全てが終わった後よ」
「でも……! 病院は行かなかったのか?」
「……怖くて、誰にも知られたくなかったし……」

 恭介は立ち上がると、智絵里に歩み寄る。背中を合わせるようにベッドに座る。たった一人で今まで抱え込んでいたんだな……。友達だったはずなのに、何もわかっていなかった自分が悔しい。
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